2013年5月27日月曜日

Agile Japan 2013基調講演「柔軟心(にゅうなんしん)と庭園デザインにおけるユーザーエクスペリエンス」

Agile Japan 2013の基調講演「柔軟心(にゅうなんしん)と庭園デザインにおけるユーザーエクスペリエンス」のノートです。



■西河誠氏(Agile Japan 2013実行委員長)による紹介

◆講演趣旨

◇枡野俊明氏について
・庭園デザイナでありながら、本職は禅のお寺の住職
・著作を読んだ
 →そこに書いてあることがソフトウェア開発のヒントになるのでは?と思った
・庭園デザインが禅の考えに基づくとどうなるのか
 →『庭に来た人が感じるものと周りの環境を考えながら、庭に来た人に最高のおもてなしをする

◇ソフトウェアも同じだと思った
・設計図どおりにはいかない
 →その場に行かないとなかなか設計できない

◇Agile Japan 2013の基調講演を依頼した理由
・『庭に来た人が ~ 最高のおもてなしをする』 という考え
 →実はこういった考えは日本の根底にあるのではないか?
 →そしてこれは"ともに創ろう、日本のアジャイル"というAgile Japan 2013のテーマに対する大きなヒントになるのでは?
・今日はどのような聞かせて頂くのか
 →ユーザエクスペリエンスに対して日本人の考えでどうアプローチしていくのか



~~~以下、枡氏の講演

■オープニング

◆はじめに

◇(声を出して挨拶を行う)
・声に出して自らの気持ちを表現する
 →相手も気持ちよくなれるし、自分も気持ちよくなれる
・自分が気持ちよくなりたいと思ったら相手を気持ちよくする
 →そうすると自分が気持ちよくなる
 →→すごく大事なこと

◇自己紹介
・禅と庭園デザインが専門
・多摩美術デザイン大学の環境デザイン学科で教鞭をとっている
・一般書、専門書も執筆している
・国内外を飛び回っている

◇今日の講演について
・講演の依頼ということでお寺に数度来てもらった
・「自分は全くソフトウェアには関係ない」
 →想像はつくけど、その世界に身をおいていないのでどういうことかなかなか分からない
・その中で、Agile Japan 2013のテーマを聞いた
 →「そこで門外漢が話すことにより、何かきっかけが生まれるかもしれない」という思いが湧いた
 →→だからオーケーした



◆「1日為さざるものは1日食らわず」

◇中国の唐の時代の話
・「働かざるもの食うべからず」の元ネタ
 →でも本来そういう意味ではない
・働くことがなすべきことかは別

◇百丈懐海(ひゃくじょうえかい)
1. 80歳を超えても畑で農作業をしていた
2. 弟子達「そんな年なのだから部屋で休んでいて欲しい」
3. 鍬と鋤を隠した
4. 百丈懐海はいたしかたなく部屋に戻る
5. でも昼も夜も食事を食べようとしない
6. 弟子達「どこか具合が悪いんですか?」
7. 百丈懐海「1日なさざるものは1日食らわず。今日1日為そうと思ったことをできなかったから食べないだけ」
8. それを聞いた弟子達は慌て、農具をすぐ出した
9. 百丈懐海は、翌日からは農耕作業を行った

◇これを今の時代の自分に当てはめる
・何か自分の特技、好きなことを通して社会に貢献できないか?
 →デザインは昔から好き
 →→禅とデザインを切り口にいろいろデザインさせてもらっている



◆庭園デザインの仕事について

◇プロジェクトの期間
・1つのプロジェクトが平均3年半
 →短くて2年
 →長いと8年。
・比較的長いスパンでの仕事をやっている。
 →佐渡川神社のプロジェクトは計画4年、現場4年。計8年かかっている
 →都立大学のキャンパス移転は5年半くらい。
 →東京にある在日カナダ大使館の移転は約8年

◇日本庭園
・今の都市にはそぐわない
 →時代遅れと意識が強い
・でも、そこには日本人が1000年以上脈々と築いてきた美意識や価値観がある
 →建築様式や生活様式はどんどん移り変わっていたとしても
 →→その根底にある価値観や美意識(何をもって美しく尊いとするのか)は変わってない



◆自分が考えていること

◇日頃、日本の美しさとはどういうものか考えている
・日本人が得意とする美意識や価値観は何かと考えている
 →それを現代の社会の中でどういかしていくか?ということをやっている
・これを現代の中にどういかして日本の空間を作っていくかというのをやっている
 →そういうものの見方をして活動している
・最初は日本の中だけだと思っていた
 →でも気付いたら、国内外から取材・問い合わせ・面会の依頼が来るようになった

◇20世紀はどういう時代だったか
・ものの豊かさ情報の速さスピードが人々を豊かにすると考えられ信じてきた
 →これを高度化すればみんな豊かになるという意識でやってきた
・しかしモノの豊かさ速さ情報量の多さが確実に人を豊かにしているかというとそうではない
 →生活のなかに常に追われている
 →次から次へ執着心が沸いてくる
・それが現実

◇21世紀にクローズアップされているもの
・精神的・心の豊かさ
 →日本だけでなく海外も目を向けている
・もともと日本ではどうだったか
 →モノの豊かさ、物理的なモノの美しさだけではない
 →その奥に潜む心の部分(精神性)を大事にしてきた

◇禅も同じ
・禅の目指すところ
 →本来の自分、自分の中にいる一点の汚れもないような心(仏性)
 →人間の秤を超えたような真実
・考え方は限りなく哲学
 →でも禅は哲学とは言わない
 →→論理を証明して学術的にやるのが哲学で
 →→禅はそれを日々の生活の中で実践する(業)だから

◇今日の講演に内容について
・自分がやっているデザインの手法、姿勢について話す
 →ソフトウェア開発をやっている人の参考になるのでは?と思っている



■庭園デザインについて

◆敷地

◇庭園をデザインするとき、どういうことをしていくのか
・発注者(クライアント)がいる
 →どういうものを作りたいかどういう内容を希望しているかをヒアリングする
 →みなさんと同じようなことをやっている
・クライアントの言葉に表れてこない部分がある
 →奥に潜んでいる部分が必ずある
 →それをどうやって引き出すか
・骨格となる言葉の背後に期待しているものがある
 →そこに付加されていくべき価値というものが必ず潜んでいる
 →それは形として出てくるものではない

◇庭園には敷地というものが必ずある
・「この敷地にはこういう施設を作りたい」
 →床面積
 →こういう使い方
 →こういう部屋
・どうデザインするか
 →当然見に行く
・その敷地が私に何を訴えているか
 →自分で納得するまでその敷地に通う
 →→"地心"を知る

◇西洋の発想では
・コンセプトを作り上げる
 →自分の考え・設計概念・理念
・それに合わせて大地を変えていく
 →だからまず大地を造成してしまう
・そしてその中で自分が設計したものを形にしていく

◇日本人の発想では
・元々大地が持っている心(possibility)を知る
 →いかにそこに命を吹き込んでいくか
・斜面地ならその斜面をどう最大限に生かしてあげるか
 →そこに流れる風
 →朝から夕方の光の変化
 →→それがどういう影を落とすか
 →→人をどういう気持ちにするのか
 →木があるなら、そこに来る鳥の声を施設に取り込めるように
・環境、大地の声を限りなく聞き取る
 →そこから始まる



◆地心と発注者の希望をどうすり合わせるのか

◇それぞれ頭の中にいれて自分のデザイン哲学でフィルタする
・そうやって何をしていくかを考える

◇「こういうものをつくろう」というのがあったとする
・どういう人が使うか
 →都市の人が週末に来る場所なら…
 →都市的なデザインにしたってしょうがない
 →→→どうやって人を包んであげるか
 →→→日頃背負っている自分自身の荷物を肩から降ろしてもらうか
 →→→どういう気持ちにさせないといけないか
 →→→どういう時間をそこで費やして帰ることが一番尊いことになるのか
・そういうことを考える

◇そうやるとだんだん空間や形が見えてくる
・何かを跨ぐと気持ちが変わる
 →それをどうデザインに取り入れるか
・見える景色を最大のご馳走にする
 →そのためにまず閉じた空間を作る
 →→手前は足元だけの景色
 →そこを抜けると天上が一気に高くなって景色を一望できるようにする
 →→「そうすると人の気持ちはドラマチックに変わるのではないか?」
 →→「そうすることで、引きずってきた仕事の荷物を降ろすことが出来るのではないか?」
・そういうことを考えてやっていく
 →そうすることでだんだん形が見えてくる

◇とうぜん紙の上でも仕事をやる
・基本概念の構築など
 →コンセプショナルワーキングなど
 →→その中で敷地や図面を見ながら条件(長所や短所)を書き込んでいく
・でもそこには現れてこないことがたくさんある
 →現場にいかないと分からないことがたくさんある

◇ソフトウェアも同じ
・クライアントから提示される条件だけものを考えると…
 →その中で凝り固まってしまう
 →それに執着してしまう
・もっと自由に
 →柔軟心

◇心を留めない
・できるだけ多くの可能性に気付いて取り込んでいく
 →そういう姿勢が大事
・そういうものを経て設計図ができあがっていく



◆工事

◇地割
・敷地の中をどう使うか決める
 →「建物はこの位置、庭はここ」
・計画に基づいて位置を出す
 →西洋「設計図はこうだからこのまま行こう」
 →私達「これは違うんじゃないか」
・大地に立つ
 →1回落としてみて、大地に立って考える
 →→「これは違うんじゃないか?」
 →→「こう動かしたほうが、初めに描いたコンセプトが明確になるのではないか?」
 →→「向こうの景色を考えると、もっとここを低く抑えないといけないのでは?」
・現場に立つとそういうものが見えてくる

◇現場で良くなるように変えていく
・「こうする」「こうしなければならない」ではない
 →条件に基づいてどんどん良い方に変えていく
・固定するのではなくて変えていくのが仕事
 →でも基本の考えよりどころは変えない
 →→さらに良い方向を発見したらその方向にどんどん変えていく
・でも予算という制約がある
 →それはプラスマイナス0になるよう努力する

◇敷地の形(使い方)が決まったら…
・今度は石を組む
 →その場でいきなり組んだりはしない
・どこか別の場所で仮石組み
 →ちょっと意味は違うけどモックアップのようなもの
・同じ条件の地形を作って石を組んでいく

◇石は建築材料とは違う
・全部自然のもの
 →いろんな形・表情がある(石心)
 →それを最大限引き出してあげるにはどうすればいいかを考える

◇仮石組みを通して石の(組みあがる)形が見えてくる
・石は自然のもの
 →同じ寸法でも一つ一つ違う
・だから現場で考える
 →その特性をもっと活かせる場所があれば瞬間に変える
・石心(石の特性)を最大限に引き出す方法をその場・瞬間で考える
 →ここに物凄い能力が問われる
・クレーンやワイヤーで吊ったとき、今まで見えていなかった裏側が見える
 →もの凄く良いところを見つけたら、その瞬間にすぐ使い方を変える

◇人に頼ったらだめ
・自分の中の美意識や価値観だけ

◇変えるときには3手先や5手先を読む
・囲碁や将棋と同じ
 →「ここをこうすると、こうなって… ここで収まるだろう」
 →そういう判断を一瞬でやっていく

◇仮石組みをやると理想的な石組みができるのだが…
・一般的にはそうはやらない
 →最初にコンクリートの躯体を打つ
 →その中で石を組む
・「こうしたらいいのに」と思ってもできない
 →それはコンクリートの躯体が先にあるから
 →躯体に合わせるべく石を切るというのは大変なコストがかかる

◇使う人に一番喜んでもらえるようにする
・芸術としての空間作りなので妥協は駄目
 →特性や効果を最大限引き出したい
・だから仮石組みをやって確認する
 →仮石組みした上で、現場での施工図を作って施工する
 →そうすれば収まる

◇材料を見るたびに見定める
・丸太橋にいって丸太を選ぶ
 →「この丸太はあの茶室のあそこに…」
 →「このへこみがなかなかいい。味がある。これを床の間に向けて…」
・それを使って大工さんに(仮組み)してもらう
 →「もうちょっと引っ込めたほうが見え方としていい」
 →「もうちょっと細い方がこの材料・空間には会う」
・これはもう感覚の世界
 →関東では通じない
 →→「太いのがいい。かっちりしているのがいい」
 →なかなか京都でやるようにはいかない
・庭でも同じ
 →「風がそよぐと揺れる枝がある。これで風を感じることができる」
 →→京都では通じる
 →→関東では…
 →→→「邪魔。切らないと手入れしたように見れない」

◇仮組みをすること = 妥協を許さないこと
・ソフトウェアなら「それがユーザの要望に充分応えられているか」を確認すること
 →ユーザの欲しいところに手が届いているか
 →ユーザの(今の)目には届いていないところに届いているか
・相手が期待している以上のところの細かいところに手が届いている
 →これは物凄い評価が上がる
 →→それがいろいろな面で次の仕事にも結びついていく

◇これはUXと結びついていると思う
・同じ機能であっても作り方は全く違うはず
 →お年寄りの場合は?
 →大人の場合は?
 →子どもの場合は?

◇それぞれ携わる人の価値観が加わってくることになる
・色が出てくる
 →その人しか出せない色
・そういうものはどんどん取り入れていったほうがよいと思う



■禅

◆禅は簡素の美

◇枯山水
・どんどんそぎ落とす
 →それ以上そぎ落とすと意図が伝わらないというところまで
 →→そういうことを大事にする
・持ったときの感触
 →言葉にできないものをできるだけ大事にする
・これが禅の発想

◇スティーブ・ジョブズ
・禅に傾倒していた
 →「仕事を通してどう自分の生き様を作り上げていくか」
・iPhoneもそう
 →ムダなものを取り除いている
 →→だから使いやすい
・でも日本のものではないので…
 →重い
 →大きい
 →無骨
・「これだけは残しておきたい」というものだけが残っている
 →肌触り
 →使い勝手
 →→そういうもの以外は取り除くという発想
・スタンフォード大学での講演
 →「毎日、鏡の前に立って問いかけている。『もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることは私の本当にやりたいことなのだろうか?』それに対する答えが『いいえ』で、そういう日が何日も続くと、私は何かを変える必要があるのだと悟る」
・まさにこの瞬間を生きるという禅の行き方
 →いつお迎えが来るか分からない
 →→だから今を全力で生きる
 →彼が禅で会得した生き方
・そういうことが、appleの発展の大きなよりどころになったのではないか?と思う

◇執着心
・ものごとを「こうやってやろう」と思うと、そこに気持ちがとらわれて身動きがとれなくなる



◆沢庵禅師

◇江戸時代の人
・柳生宗矩と関係が深い
 →宗矩は剣術を武道にまで昇華した人
 →柳生一門はずっと剣術をやってきた
 →→そもそもは技術の人だということ
 →→→そんな宗矩に大きな影響を与えたのが沢庵禅師

◇柳生宗矩「剣の道を究めていく極意を教えて欲しい」
・囚われない
 →相手の小手を打とうと思うと自分の心が相手の小手に縛られてしまう
 →→他に隙が出来てもそこが見えなくなってしまう
・「ここを攻めよう」というところを持たない
 →留めない
 →→そうすれば一瞬生まれた隙が見える
・すぐそこで対処すれば必ず負けることはない
 →それから柳生宗矩はゆっくりと動くようになった

◇沢庵禅師「宗矩、この雨にぬれない極意を見せてくれ」
・宗矩は表に出て行って雨を滅多切りにする
 →しばらくやって戻ってくる
 →→沢庵「なんだ。ずぶ濡れじゃないか」
 →→→宗矩「じゃあ和尚、濡れない方法があるなら見せてくれ」
・今度は沢庵が表に出る
 →手を空に上げてただ立っているだけ
 →→当然ずぶぬれ
 →→→宗矩「何だ。和尚もずぶ濡れじゃないか。それが極意か?」
 →→→→沢庵「そうだ。おぬしは雨と対立して濡れまいとした。そこに対立する姿勢があった。私は雨と1枚になった。雨と1つになっているから私は濡れているのではない。雨そのものになったのだ

◇こうやって剣術が禅と結びついていった
・剣という技術を通して生き様を極めるやり方ができた
 →現代の剣道にも通じている
 →→剣術を通して生き様を極める
・柔道や茶道も同じ
 →禅と結びついて道になった

◇何かをやろうとしたとき
・頭の中に計画があっても良い
 →でもそれに縛られるのではない
・「どうやったらそのものと1つになれるか」を考える
 →そうやってフレキシブルにやる
 →これを極めたら日本のソフトウェア開発が生まれてくるかもしれない



■日本と外国

◆外国と比べた日本の特徴

◇ドイツ
・骨太
・理屈っぽい
・譲らない
・機能だけでいったらすごい

◇北米
・コンセプトは物凄い
 →ある意味日本人を超えている
・でも誤差や精度は劣っている
 →実際にモノに落とすとき、言っていることと書いている絵は全然違う

◇アジア
・日本と同じくらい精度が高いものを作るのではないか
 →でも全然違う

◇日本人
・器用
 →緻密にきれいな仕事をする
・他の国にはない特徴



◆世界といろいろな意味で競争するにあたって

◇みなさんがやっている仕事と私がやっている仕事
・いろんな面で共通性がある
 →意外と繋がっているところがたくさんある
 →→それをどういう風に生かしていけばいいか

◇日本はどうすればよいか
・海外と同じことをやる
 →これだとなかなか勝ち目がない
・海外の人達と全く違う視点でやる
 →ものを作っていく
 →姿勢を作っていく
 →→そこに日本人が一番得意とするところがある

◇品質を常に高めていくという日本の器用さ
 →これをどう仕事の中に生かしていくか

◇ガラパゴス化
・多機能で使いこなせないソフトウェア
 →これは避けないといけない

◇ソフトウェアエンジニアリング道
・おもてなしや気遣い
・開発者には技術がある
 →その技術をとおして自らの生き様を築く
 →→それは立派な道になる
・そういうことがなされていくと…
 →ソフトウェアを通して仕事の上でのビジネス価値も上げていくことができる
 →ユーザの満足度もあがっていく



■クロージング

◆最後に

◇"これでいい"というのはない
・禅もそう
 →修行がこれでおしまいというのはない
・常に先がある
 →常に先があるからこそ毎日努力していく
・禅にはそういう姿勢や考え方がある

◇禅では整った均整を嫌う
・均整には終わりがある
 →完全には終わりがある
・不完全には無限の可能性がある
 →禅では均整を必ず打ち壊す
・ヨーロッパの美
 →完全なる美を求める
・日本の禅の美
 →完全を越えた不完全の美

◇完全というものには人間性や精神性が張り込む余地がない
・それを破る
 →そうやって人間性や精神性が入り込む余地を残す
・世代を超えて愛されるということはどういうことか
 →「この作品はあの意図の生き様や人間性そのもの」
 →→そういうものを残していくこと



◆アジャイルについて

◇講演依頼を貰ったときに初めて聞いた
・そして良く考えた

◇アジャイルという言葉は日本的にいくとフラジャイルに近くなるのでは?
・アジャイルは機敏
 →フラジャイルは脆い・履かない
・それは仏教では無常という
 →常にうつろいでいくことが世の中の真実
 →留まっているものはない
・完全でこれで終わりというソフトウェアなどないのではないか
 →常にフラジャイルであること
 →→そうすることで、そこに暮らす人の価値観やニーズに合うのではないか






枡野俊明様, Agile Japan実行委員会の皆様、ありがとうございました。

2013年5月22日水曜日

【読書】システム設計の謎を解く 強いSEになるための、機能設計/入出力設計の極意


モニターということで、ソフトバンククリエイティブ様より御本を贈って頂きました。ありがとうございます。





まだ隅々までは目を通しきれてはいないのですが、いま読んでいて思ったことなど書いておきたいと思います。



■はじめに

この本の最後の章には次のような記述があります。

・本書は共通・文書化などを取り上げているため、「ウォーターフォール」型開発に関する書籍だととらえられてしまうのではないかという危惧を抱いています。 
・本書ではあえて設計や文書化の方法に多くの説明を行っています。これは、「設計要素を知っていて文書や記述を削る」のは適切な行為だと思いますが、「設計要素があることを知らずに文書や記述を削る」のは品質やプロジェクトの遂行に対してマイナスの要素をもたらすと考えているからです。 
・アジャイル開発では「設計はしない」「設計書は書かない」ととらえているとしたら、それは誤解です。アジャイル開発においても当然設計は行います。

この本自体は、要求から始めて段階的に設計を詳細化していくというスタイルで記述されており、一見するとウォーターフォールなソフトウェア開発における上流工程のエンジニアリングについて書いてあるように見えます。

しかし、先ほど引用した文章に書いてあるとおり、著者の意図は『この本に書いてある順番どおりに設計プロセスを進めて欲しい』ではなくて、あくまで『各種設計フェーズにおける検討事項や設計する際のポイントについて理解してもらいたい』なのです。

ここを押さえて読むのと押さえないで読むのとでは、だいぶ受ける印象が違うと思います。

※なお、3つ目の引用では、アジャイルと設計・ドキュメンテーションの関係について触れているのですが、この点はとても大事だと思います。大事なことなので繰り返し書きますが、アジャイルなソフトウェア開発でも設計はするし、必要なだけのドキュメントは書きます。



■感想

システム設計についてこれから始める人にとってはいろいろ便利な本なのかなーと思いました。

タイトルにあるとおり、この本はシステム設計についての本なので、システムを構築するにあたっての知見がいろいろと詰めてあります。例えば、要件定義から設計の間にやるべきこととして、次のような作業を上げています。

●全体設計
・システム境界図
・システム俯瞰図
・サブシステム連携概要
 
●アーキテクチャ方針
・オンラインアプリケーション方針
・帳票出力方式
・ジョブ管理・実行方針
 
●標準設計
・文書テンプレート
・記述粒度・ガイドライン
・設計基準
 
●共通設計
・画面共通
・帳票共通
・バッチ共通
・DB共通
・メッセージ共通

割とがっつりと検討してますよね。で、この"がっつり"という点が個人的には重要だと思っています。

例えば、システム設計について経験したことが無い人がその辺りの知識を自主的に学ぼうと思った場合を考えます。個人的にちょっとしたツールなどを作るときに、設計などやってみて知見をためるというのは1つの優れたやり方ではあるのですが… こと設計については話がやや異なると思っていて、それは"ちょっとしたツール"という規模だと、上述したような質・量で事前の検討はしないと思うからです(してもあまりメリットを実感できないと思います)。つまり、そこから学ぶことができるはあくまで"ちょっとしたツール"の規模の複雑さと、それに応じた設計までにしかならないということです。

あるいは、自主的に学ぶのではなく実際にシステムを作るときに失敗などを経験し、そこから学ぶのもよいのですが、現場で失敗するのはいろいろとおいしくないし、それよりは先人の知恵から学んだ方が良いわけで、そういう意味でこの本は便利だなーと思いました。


で、この本を読む時、成果物として定義してあるドキュメントの書き方からそのまま覚えていくという、ストレートな学び方もありだと思うのですが、ここまでかっちりしたドキュメントが必要となる現場はともかく、そうでない現場にいる人であれば、もう少しエコに読み進めていくのが良いとも思います。

システムの構築を行う際にその設計が求められる理由や、その設計を行うことによってどのようなリスクを事前に考慮できるのかなど、そういった観点に立って読んでいくと良いということです。


また、粒度や方針・整合性といった、一貫性のある設計をするのであれば否応なしに意識せざるをえない観点について、繰り返し記述が入っているのも良いと思いました。そういうのは大事です。

設計における一貫性を検討しない(設計思想がない)まま実装を始めてしまうと、やはり当然というか、コードからは設計レベルにおける意図が見えてこないような成果物ができてしまうだけなので… やはりそういうソースは保守していくのも面倒だし…



■最後に

この本はオブジェクト指向やドメイン駆動なアーキテクティング・デザインについての本ではないと断ってあるのですが、OODやDDDから始める場合だってオブジェクトを永続化するのに使うのは大体の場合DBなわけで、そうであるならI/Oやトランザクションについて検討するのはやはり重要なわけです(この本に書いてあるような事柄を検討しないまま実装するとだいたい後で酷い目に会います)。

この本は、そういう意味でも"開いた"内容になっているので、この本に書いてあることがズバリ当てはまるような業務系のSEだけではなく、広い意味で設計に関わっていくような人はまず押さえておくとよいのかなーと思いました。

個人的には、手元においてハンドブックみたいに使おうかなーと思っています。


2013年5月19日日曜日

『「パタン・ランゲージ」って 知っていますか?』ノート

2013/05/18に開催された『「パタンランゲージ」って 知っていますか?』のノートです。



◆パタン・ランゲージについて

◇パタン・ランゲージという呼称について
・なぜパターンではなくてパタンなのか?
 →パターンは実際の発言にあってないから
 →パタンの方がより近い
・パタン・ランゲージという呼称が定着したのは?
 →本が出たときは『形の言語』とか『造詣言語』とかいろいろ言われていた

◇パタンの意味について
・日本
 →同じ形が繰り返されるというイメージ
・外国
 →様式とかスタイルという意味も含んでいる
 →形は変わるけど、同じルールでやっているという意味合いの方が強い
・『パタン = すごく堅苦しい感じ』
 →みんなの考え方の中にはそういうものが多いが、そうではない
・PatternのPa-について
 →日本の汎(すべて)と同じ意味
 →Pattern = 大元の原型という意味

◇パタン・ランゲージの普及
・ITに応用された
 →GoFという人達がパタン・ランゲージをITに応用
 →IT業界ではパターンに基づいて研究するグループなどが現れている
 →→IT業界でパタンランゲージという言葉は意外と知られている
・慶応大学でも使っている
 →伊庭先生が学習・勉強するときのパターンを作っている
・勉強の方法教えるためのパターンとして教えている
 →パターンには方法を教えるという意味もあるということ
・ダンスの世界でも使われている
 →振り付けの人が振り付けを記号化するのに使ったりしている
・パタン・ランゲージとは何か?
 →ある1つのものを作るための方法
 →再現するための方法



◆アレグザンダーの話

2年前、中埜さんがロンドンにアレクザンダーを尋ねたときもらったメッセージ
※あくまでノートなので、正確な書き起こしではありません

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中埜さんが私に何か短いスピーチをしてくれと言っています。
彼は地震や津波でいまの日本が大変な状況に直面していると感じています。
日本人はこの災害で大きく自身を失い、『どうやって復興すればよいのか?』という道すら失いかけているということでした。

実際にはこれは日本だけの出来事ではありません。アメリカも同じです。
はっきり口に出す人は少ないですが、英国も同じです。
多くの国々で、人々は同じような喪失感にとらわれています …ではどうすればいいのでしょうか?

私はずっと長い間こんなことを求めてきました。
 ・美しさとは何か
 ・何が正しいのか
たいへん子どもっぽい疑問ですが、もう充分年を取ったのでそう言われるのは構わないのです。

助言するのであれば… 何かを決定するとき、何かの行動をするとき、何かを作り出すとき、そういった活動全てに対して、いつでもそれは本当にあなたの『心の内部からにじみ出る美しさ』に裏付けられているか?です。
それは『心の内部からにじみ出る美しさ』に自分が貢献できているか?ということです。
行動でも、発言でも、絵を描くときでも… 老人をバスに乗せるために手伝っているときでも同じです。
『心の内部からにじみ出る美しさ』に、あなたはいま貢献できているかということなのです。

この問いを真剣に行うなら、本当の変化が起こるでしょう。
初めて聞く人の中には『それに何の意味があるのか?』と思ったり『ばかげている』と一笑に付す人もいるかもしれません。
しかし、この現実的な美に直面すれば、まずあなた自身が変わることでしょう。
そうすれば、それを見ている人々が変わります。
そして、そのことについて考えていた人々が変わります。
その時に新しい道が開けるのです。

これは単純なことですが、、たいへん力があります。
なぜならこれは心(Kokoro)の底から生まれてくるものだからです。

これはとてもささやかな助言ですが… あなた自身の人生をも変えることでしょう。
世の中のいたるところに散らばっている小さな美しさを見つける努力をして欲しいと思います。
この台所で話し合っていたようなことや、緑の隙き間から見える木漏れ日が美しく、かわいいことなど… それは"大げさな"ことではありませんが、"大きな"ことです。

この小さな景色を探し続けること、その小さな行為を求め続けること、小さな心の感動を感じ続けてください。
それらのために、その感動が人生に貢献するように生きていこうとするのであれば、どんなものであってもそこから切り離すことはできません。
ただ、その中でも、お金は非常に醜い方法で切り離そうとしてくるでしょう…
しかし、緑の木々の葉の木漏れ日は、けっしてあなたの心から切り離すことはできないのです
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Message from Prof. Christopher Alexander



◇でも… 内的な美しさって難しい
・疑問がある
 →内部からにじみ出る美しさとは何か
 →そういうものに感動する心を追求することがいかに世の中を変革するのか
 →それだけの力があるのか
・そういう意味で彼の言っていることの意味は分かりにくい
 →今日の2時間で少しでも近づいて欲しい

◇「豊かさの貧困」という絵
・中埜さんが学生運動時代に見た絵
・ペットに囲まれ広い豪華な家に住んでいる未亡人。テレビ越しにアフリカで飢餓していく人のテレビを見て泣いている
 →豊かで満たされているけど何かが無い
 →それは我々も同じ
・豊かにはなったけど、そこに実質的なリアリティがあるのか?という話
 →今も当時と変わらなくなってしまっている



◆パタンと自意識の手前にあるものの関係

◇ラマチャンドランの実験『ブーバ/キキ効果』
Q. どちらがブーバで、どちらがキキでしょうか?
1. ☆
2. δ

(会場のほぼ全員がブーバ = δで、キキ = ☆と答える)

・どうして音が形になるのか
 →音の持つ印象とその絵の印象?
 →→でも音を説明する方法は難しい
・なだらかに音が変わるブーバと、鋭い音の集まりのキキ
 →そもそも脳の反応の仕方として違っていて、それが印象に跳ね返っている
・『自意識に存在しているけど、自意識になっていない』
 →そういうものがあるものがあるということ
 →言葉で説明されなくても分かることがたくさんあるということ
 →意識は言葉以前に存在するということ
・自分達の中に存在しているけど、自意識になっていないものがある
 →実は意識の直前で判断しているものが多い
 →何かが意識の前にあって判断しているということ
 →→自意識は意外といい加減だということ

◇ワーク : 2枚の絵がひたすら出てくるので、どちらが好きなのか選ぶ
・観点
 →どっちがいいか
 →どっちが嫌いじゃないか
 →どちらにいたいか?
 →どちらがよりなじむ感じがするか?
・自意識を抜きにして、質問をきちんと定義しないで応える
 →この体験を何回も繰り返すという体験
 →これと同じことをパタンでも行う
 →→そうすることで、パタンに本当に力があるのかを見分けることができる

◇自意識の直前にあるものと哲学の関係
・りんごを見ると人はどうなるか
 →甘い、おいしい、やわらかいと思う
 →でも、言葉でそう思うより前、りんごを見た瞬間に体験する何かがある
・それを哲学の世界(西田幾多郎)では純粋経験といっている
 →言葉の前に感じる意識
 →意識の前に経験すること
 →→このような感覚をパタン・ランゲージの実践者は重視している

◇パタンは調査やヒアリングに基づいて作ることができる
・傾向を探るというのもパタンを作る1つのやり方
 →「何をしたいか」という観察やヒアリングによって
・多数決で決めるやり方もある
 →人間が一番好きなことやりたいこと美しいこと

◇博物館にある高級な陶磁器
・「なぜこれが高級なのか?」をパタンの観点から見ると
 →モノが作りだす形(それが外を区切る形)が美しいのではないか?
・これがパターンにおける見方の1つ
 →言われると「あっ、そうだな」と分かる類のもの
 →→それがパタンの1つの性格




◆パタンについてその他

◇パタンの大事な役割
・共通言語
 →組織を作るとき、組織を動かす共通言語があるべき
 →いいのは分かるけど、何がいいのか口に出すことが出来ない
 →それをできるようにするのがパタンランゲージの役割
・一番リアリティがあるものを描き出す
 →パタンはリアルな世界を発見することから始まる
・現実にはないものを認める
 →我々の感覚で凄くいいと思うことを大事にするため

◇パタンの書き方
・寅さんの家
 →自分の家の中に半分は公共、半分はプライベートという空間がある
 →それが寅さんの家を非常にユニークにしている
 →→でも似たようなものが世界中にある
・ペルーの集合住宅
 →入り口にたまりがある
 →どんな家族が戻ってきても挨拶してから入っていく
 →何か寅さんの家の機能に似ている
・これをどうパタンとして書くのか
 →パタンは具体的な行動を呼び起こすように書かないといけない
 →→『家の中に半分公共で半分プライベートな空間を作る』とは書かない
 →→『大切な空間では、いろいろな人が横を通り過ぎるようにしなさい』というのがパターンの書き方
・パタンは、具体的な行動が起こるように考えて書かないといけない
 →パタンがある性質を持っている
 →→「どうやったらそれを実現できるか?」
 →→→「どうすればそういう行動が起こるか?」
 →→→→そういう行動が起こることまで念頭に置いて書く

◇パタンの難しさ
・実現するのが難しい
 →そもそも、パタンは言葉に出来るよう発見するという行為
 →言葉で書いてあるものを読んでもなんでもないように見えてしまう
 →→簡単なことだけど実現するのが難しい、ということになる
・発見が難しい
 →今ないものを作り出さないといけない
 →→でも、言ったものがすぐパタンになるわけではない
・パタンの見つけかた
 →観察する
 →起こっている人間の行為を描く
 →発見する

◇ボトムアップ(下から意見をくみ上げるとき)にもパタンが使える
・ボトムアップには以下の作業がある
 →課題の発見
 →いまそこにないものへの仮説
 →それを動機付けする
・全部やらないと成功しない
 →それがパタンの仕事

◇どうしてボトムアップにパタンが使えるのか
・パタンランゲージの役割
 →発見 : 新たなパタンを生み出す
 →今そこに無いものを見出す(仮説) : パタンを通してそこに今ないものを見ることができる
 →動機を作り出す : 欲しいものを言えるようになる
 →自分だけの希望を作り出す : つなげて物語を作り出す
・パタンというのはみんながやっている当たり前のものをただ書き出したもの
 →これをくっつけてエピソードや自分の建物、街や仕事場を作らないといけない
・パターンの合成されたものを持ち、それを合意する
 →エピソードを組み合わせて長いストーリーを作り、それがどうであるか見る
 →その物語をみんなで合意することで動機がうまれる



◆パタンを使ったコミュニティビジネスの事例1. 東北

◇東北
・震災後、建物は残らなかった
 →施設がなくなってモノが消えた
 →残っている建物も焼けて中は真っ黒で壊さないといけない状態
・報告書の表紙に広重の絵を使い、非難を受けた
 →舟で頑張っている人がいるので、我々も頑張ろうとして使ったが非難された
 →それだけショックが大きくすごかったということ
・東北の復興にはすごく難しいものがある
 →あれから2年間たったけど、そのときから何も変わってない
 →難しさを知ったとき、パタン・ランゲージの考え方を思いだした

◇東北で何をやったか
・東北で一番最初にやったこと
 →二週間避難所に泊り込んで聞き込みしてパタンを作った
・一人ひとりの一番希望していることや要求をつかむのがパタン・ランゲージ
 →1人1人個人面接をした
 →→最初はどう生き残ったかという話
 →→津波が来たので逃げて、自分だけ助かった話
 →→渋滞中、自分達だけ津波に気づいたので逃げて助かった話
 →そこまで話してからパタンの話を聞いた
 →→ほとんどの人が60以上
 →→ここから墓に行くのはかなわない
 →→仮説から火葬はたまらない
・聞き取りをして、みんなが欲しいものが変わっていることが分かった
 →再演 野菜をたくさん作ってみんなに配りコミュニケーションしたい
 →納戸 いろんな財産は流されているけど残っているものがある。家や村にとって大事なもの
 →作業所
 →中央広場
 →コミュニティガーデン
・それぞれ、自分のことだけではなく町全体のことを考えていた
 →個人的なことを言っているようだけど、どれもコミュニケーションについてのことだった
・聞き取りをして、自分が欲しいものを書き出してもらう
 →そうすることで、みんなの共感覚が見えてくる
・大災害で追い詰められて極限まで追い詰められたときに出てきたもの
 →豊かで何も困っていないときに聞いたのではない
 →究極にまで追い詰めてまで聞かないといけないときがある
 →それくらいやりたいことの根源を追求するのがパタン

◇まとめ
・パタンは人を観察して、人のやりたいことを書き込むもの
 →実際にはそれだけではない
・パタン・ランゲージは観察しそれを書くだけのものではない
 →『一番上手くいくであろう方法を発見し仮説化する』というのも考えている
・パタンを組み合わせてパタン・ランゲージを作る



◆パタンを使ったコミュニティビジネスの事例2. 南紀白浜

◇浜通り商店街
・この町の活性化
 →昔は大阪の避暑地だったが勝浦に負けてしまった
・1年のうち2ヶ月で食べている町
 →避暑地以外には何もない町
 →でも行ってみると温泉があって1年中利用できる場所だった

◇町おこしの為にやったこと
・まず4年間住み込んだ
 →住み込んでパタンランゲージを作った
・できたパタンランゲージをどう説明したか
 →ストーリーを作りそれを読み上げた

◇まずストーリーを作った
・まず、聞き取りから
 →「自分の町にはぜんぜん良いところがない」
 →「昔はダンスホールがあった」
 →「一番良いのは海かなー」
 →「入り口はないでしょう?」
 →「いろいろなところにあるよ」
 →知っているのは町の人だけだった
・町の人にとって大事なことはすぐには言葉に上がってこない
 →誇るべきものがないと思っているから
 →→それだとわからない
 →最初は苦労する
 →少しずつ話していくと何が大事かを振り返るようになり出てくる
・一番良いものは海だった
 →「海を中心にして温泉があり、海を中心にして歩行路があり、海を中心にしてレストランがあり、海を中心にして車が来るようにすればよいですね?それでいいんですね?」
 →「そうです。これなら、自分達の言いたいことを全部言えている」
・それを元にストーリーに作った
 →まずはパタン
 →ガーデンレストランや温泉など、それぞれに独立した言葉がついている
 →それらを裏通り、歩行路、松林といったもので繋げる。
・別々のエピソードが組み合わさって1つのストーリーになっている。
 →いろいろなエピソードが入っているけどそれが一貫して流れることで理解してもらえる
・作ったストーリーをどうしたか
 →このエピソードに基づいて絵を描いた
 →これを元に実際に町を作った

◇この事例のまとめ
・コミュニティビジネスとしてパタン・ランゲージを作った
 →みんながやる気を出せることを計画
 →→それをパタンにした
・みんなのやりたいことを引き出すのがパタン
 →それぞれからエピソードを聞いた
 →それをまとめて1つのストーリーを作った
・みんなは1つ1つのエピソードをやりたい
 →でもそれ単体だけはストーリーになってない
 →物語を作る(実施する)人達がいないといけない
 →パタンからストーリーを作ることができる専門家が必要
・町の物語は町の人達で作る必要がある
 →自分達が作ったものだから納得できる
・パタン・ランゲージはその地域の人達が語る言葉で
 →その地域の特殊な条件の中で育てないといけない
・エピソードの一個一個がプロジェクト・ランゲージになる
 →1つ1つのエピソードが面白くて1つのストーリーになる
・パタンによる本質的なエピソード
 →みんなのこだわりがあってエピソードが出来る
 →良い脚本が描けるか、説得力があるか
 →1人1人のこだわりがあって、それによって1つのストーリーができあがる
・エピソードを繋げる(パタン・ランゲージを作る)作業はとても難しい







中埜博様、アマルフィアカデミー様、ありがとうございました。