◆パタン・ランゲージについて
◇パタン・ランゲージという呼称について
・なぜパターンではなくてパタンなのか?
→パターンは実際の発言にあってないから
→パタンの方がより近い
・パタン・ランゲージという呼称が定着したのは?
→本が出たときは『形の言語』とか『造詣言語』とかいろいろ言われていた
◇パタンの意味について
・日本
→同じ形が繰り返されるというイメージ
・外国
→様式とかスタイルという意味も含んでいる
→形は変わるけど、同じルールでやっているという意味合いの方が強い
・『パタン = すごく堅苦しい感じ』
→みんなの考え方の中にはそういうものが多いが、そうではない
・PatternのPa-について
→日本の汎(すべて)と同じ意味
→Pattern = 大元の原型という意味
◇パタン・ランゲージの普及
・ITに応用された
→GoFという人達がパタン・ランゲージをITに応用
→IT業界ではパターンに基づいて研究するグループなどが現れている
→→IT業界でパタンランゲージという言葉は意外と知られている
・慶応大学でも使っている
→伊庭先生が学習・勉強するときのパターンを作っている
・勉強の方法教えるためのパターンとして教えている
→パターンには方法を教えるという意味もあるということ
・ダンスの世界でも使われている
→振り付けの人が振り付けを記号化するのに使ったりしている
・パタン・ランゲージとは何か?
→ある1つのものを作るための方法
→再現するための方法
◆アレグザンダーの話
◇2年前、中埜さんがロンドンにアレクザンダーを尋ねたときもらったメッセージ
※あくまでノートなので、正確な書き起こしではありません
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中埜さんが私に何か短いスピーチをしてくれと言っています。
彼は地震や津波でいまの日本が大変な状況に直面していると感じています。
日本人はこの災害で大きく自身を失い、『どうやって復興すればよいのか?』という道すら失いかけているということでした。
実際にはこれは日本だけの出来事ではありません。アメリカも同じです。
はっきり口に出す人は少ないですが、英国も同じです。
多くの国々で、人々は同じような喪失感にとらわれています …ではどうすればいいのでしょうか?
私はずっと長い間こんなことを求めてきました。
・美しさとは何か
・何が正しいのか
たいへん子どもっぽい疑問ですが、もう充分年を取ったのでそう言われるのは構わないのです。
助言するのであれば… 何かを決定するとき、何かの行動をするとき、何かを作り出すとき、そういった活動全てに対して、いつでもそれは本当にあなたの『心の内部からにじみ出る美しさ』に裏付けられているか?です。
それは『心の内部からにじみ出る美しさ』に自分が貢献できているか?ということです。
行動でも、発言でも、絵を描くときでも… 老人をバスに乗せるために手伝っているときでも同じです。
『心の内部からにじみ出る美しさ』に、あなたはいま貢献できているかということなのです。
この問いを真剣に行うなら、本当の変化が起こるでしょう。
初めて聞く人の中には『それに何の意味があるのか?』と思ったり『ばかげている』と一笑に付す人もいるかもしれません。
しかし、この現実的な美に直面すれば、まずあなた自身が変わることでしょう。
そうすれば、それを見ている人々が変わります。
そして、そのことについて考えていた人々が変わります。
その時に新しい道が開けるのです。
これは単純なことですが、、たいへん力があります。
なぜならこれは心(Kokoro)の底から生まれてくるものだからです。
これはとてもささやかな助言ですが… あなた自身の人生をも変えることでしょう。
世の中のいたるところに散らばっている小さな美しさを見つける努力をして欲しいと思います。
この台所で話し合っていたようなことや、緑の隙き間から見える木漏れ日が美しく、かわいいことなど… それは"大げさな"ことではありませんが、"大きな"ことです。
この小さな景色を探し続けること、その小さな行為を求め続けること、小さな心の感動を感じ続けてください。
それらのために、その感動が人生に貢献するように生きていこうとするのであれば、どんなものであってもそこから切り離すことはできません。
ただ、その中でも、お金は非常に醜い方法で切り離そうとしてくるでしょう…
しかし、緑の木々の葉の木漏れ日は、けっしてあなたの心から切り離すことはできないのです
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Message from Prof. Christopher Alexander
◇でも… 内的な美しさって難しい
・疑問がある
→内部からにじみ出る美しさとは何か
→そういうものに感動する心を追求することがいかに世の中を変革するのか
→それだけの力があるのか
・そういう意味で彼の言っていることの意味は分かりにくい
→今日の2時間で少しでも近づいて欲しい
◇「豊かさの貧困」という絵
・中埜さんが学生運動時代に見た絵
・ペットに囲まれ広い豪華な家に住んでいる未亡人。テレビ越しにアフリカで飢餓していく人のテレビを見て泣いている
→豊かで満たされているけど何かが無い
→それは我々も同じ
・豊かにはなったけど、そこに実質的なリアリティがあるのか?という話
→今も当時と変わらなくなってしまっている
◆パタンと自意識の手前にあるものの関係
◇ラマチャンドランの実験『ブーバ/キキ効果』
Q. どちらがブーバで、どちらがキキでしょうか?
1. ☆
2. δ
(会場のほぼ全員がブーバ = δで、キキ = ☆と答える)
・どうして音が形になるのか
→音の持つ印象とその絵の印象?
→→でも音を説明する方法は難しい
・なだらかに音が変わるブーバと、鋭い音の集まりのキキ
→そもそも脳の反応の仕方として違っていて、それが印象に跳ね返っている
・『自意識に存在しているけど、自意識になっていない』
→そういうものがあるものがあるということ
→言葉で説明されなくても分かることがたくさんあるということ
→意識は言葉以前に存在するということ
・自分達の中に存在しているけど、自意識になっていないものがある
→実は意識の直前で判断しているものが多い
→何かが意識の前にあって判断しているということ
→→自意識は意外といい加減だということ
◇ワーク : 2枚の絵がひたすら出てくるので、どちらが好きなのか選ぶ
・観点
→どっちがいいか
→どっちが嫌いじゃないか
→どちらにいたいか?
→どちらがよりなじむ感じがするか?
・自意識を抜きにして、質問をきちんと定義しないで応える
→この体験を何回も繰り返すという体験
→これと同じことをパタンでも行う
→→そうすることで、パタンに本当に力があるのかを見分けることができる
◇自意識の直前にあるものと哲学の関係
・りんごを見ると人はどうなるか
→甘い、おいしい、やわらかいと思う
→でも、言葉でそう思うより前、りんごを見た瞬間に体験する何かがある
・それを哲学の世界(西田幾多郎)では純粋経験といっている
→言葉の前に感じる意識
→意識の前に経験すること
→→このような感覚をパタン・ランゲージの実践者は重視している
◇パタンは調査やヒアリングに基づいて作ることができる
・傾向を探るというのもパタンを作る1つのやり方
→「何をしたいか」という観察やヒアリングによって
・多数決で決めるやり方もある
→人間が一番好きなことやりたいこと美しいこと
◇博物館にある高級な陶磁器
・「なぜこれが高級なのか?」をパタンの観点から見ると
→モノが作りだす形(それが外を区切る形)が美しいのではないか?
・これがパターンにおける見方の1つ
→言われると「あっ、そうだな」と分かる類のもの
→→それがパタンの1つの性格
◆パタンについてその他
◇パタンの大事な役割
・共通言語
→組織を作るとき、組織を動かす共通言語があるべき
→いいのは分かるけど、何がいいのか口に出すことが出来ない
→それをできるようにするのがパタンランゲージの役割
・一番リアリティがあるものを描き出す
→パタンはリアルな世界を発見することから始まる
・現実にはないものを認める
→我々の感覚で凄くいいと思うことを大事にするため
◇パタンの書き方
・寅さんの家
→自分の家の中に半分は公共、半分はプライベートという空間がある
→それが寅さんの家を非常にユニークにしている
→→でも似たようなものが世界中にある
・ペルーの集合住宅
→入り口にたまりがある
→どんな家族が戻ってきても挨拶してから入っていく
→何か寅さんの家の機能に似ている
・これをどうパタンとして書くのか
→パタンは具体的な行動を呼び起こすように書かないといけない
→→『家の中に半分公共で半分プライベートな空間を作る』とは書かない
→→『大切な空間では、いろいろな人が横を通り過ぎるようにしなさい』というのがパターンの書き方
・パタンは、具体的な行動が起こるように考えて書かないといけない
→パタンがある性質を持っている
→→「どうやったらそれを実現できるか?」
→→→「どうすればそういう行動が起こるか?」
→→→→そういう行動が起こることまで念頭に置いて書く
◇パタンの難しさ
・実現するのが難しい
→そもそも、パタンは言葉に出来るよう発見するという行為
→言葉で書いてあるものを読んでもなんでもないように見えてしまう
→→簡単なことだけど実現するのが難しい、ということになる
・発見が難しい
→今ないものを作り出さないといけない
→→でも、言ったものがすぐパタンになるわけではない
・パタンの見つけかた
→観察する
→起こっている人間の行為を描く
→発見する
◇ボトムアップ(下から意見をくみ上げるとき)にもパタンが使える
・ボトムアップには以下の作業がある
→課題の発見
→いまそこにないものへの仮説
→それを動機付けする
・全部やらないと成功しない
→それがパタンの仕事
◇どうしてボトムアップにパタンが使えるのか
・パタンランゲージの役割
→発見 : 新たなパタンを生み出す
→今そこに無いものを見出す(仮説) : パタンを通してそこに今ないものを見ることができる
→動機を作り出す : 欲しいものを言えるようになる
→自分だけの希望を作り出す : つなげて物語を作り出す
・パタンというのはみんながやっている当たり前のものをただ書き出したもの
→これをくっつけてエピソードや自分の建物、街や仕事場を作らないといけない
・パターンの合成されたものを持ち、それを合意する
→エピソードを組み合わせて長いストーリーを作り、それがどうであるか見る
→その物語をみんなで合意することで動機がうまれる
◆パタンを使ったコミュニティビジネスの事例1. 東北
◇東北
・震災後、建物は残らなかった
→施設がなくなってモノが消えた
→残っている建物も焼けて中は真っ黒で壊さないといけない状態
・報告書の表紙に広重の絵を使い、非難を受けた
→舟で頑張っている人がいるので、我々も頑張ろうとして使ったが非難された
→それだけショックが大きくすごかったということ
・東北の復興にはすごく難しいものがある
→あれから2年間たったけど、そのときから何も変わってない
→難しさを知ったとき、パタン・ランゲージの考え方を思いだした
◇東北で何をやったか
・東北で一番最初にやったこと
→二週間避難所に泊り込んで聞き込みしてパタンを作った
・一人ひとりの一番希望していることや要求をつかむのがパタン・ランゲージ
→1人1人個人面接をした
→→最初はどう生き残ったかという話
→→津波が来たので逃げて、自分だけ助かった話
→→渋滞中、自分達だけ津波に気づいたので逃げて助かった話
→そこまで話してからパタンの話を聞いた
→→ほとんどの人が60以上
→→ここから墓に行くのはかなわない
→→仮説から火葬はたまらない
・聞き取りをして、みんなが欲しいものが変わっていることが分かった
→再演 野菜をたくさん作ってみんなに配りコミュニケーションしたい
→納戸 いろんな財産は流されているけど残っているものがある。家や村にとって大事なもの
→作業所
→中央広場
→コミュニティガーデン
・それぞれ、自分のことだけではなく町全体のことを考えていた
→個人的なことを言っているようだけど、どれもコミュニケーションについてのことだった
・聞き取りをして、自分が欲しいものを書き出してもらう
→そうすることで、みんなの共感覚が見えてくる
・大災害で追い詰められて極限まで追い詰められたときに出てきたもの
→豊かで何も困っていないときに聞いたのではない
→究極にまで追い詰めてまで聞かないといけないときがある
→それくらいやりたいことの根源を追求するのがパタン
◇まとめ
・パタンは人を観察して、人のやりたいことを書き込むもの
→実際にはそれだけではない
・パタン・ランゲージは観察しそれを書くだけのものではない
→『一番上手くいくであろう方法を発見し仮説化する』というのも考えている
・パタンを組み合わせてパタン・ランゲージを作る
◆パタンを使ったコミュニティビジネスの事例2. 南紀白浜
◇浜通り商店街
・この町の活性化
→昔は大阪の避暑地だったが勝浦に負けてしまった
・1年のうち2ヶ月で食べている町
→避暑地以外には何もない町
→でも行ってみると温泉があって1年中利用できる場所だった
◇町おこしの為にやったこと
・まず4年間住み込んだ
→住み込んでパタンランゲージを作った
・できたパタンランゲージをどう説明したか
→ストーリーを作りそれを読み上げた
◇まずストーリーを作った
・まず、聞き取りから
→「自分の町にはぜんぜん良いところがない」
→「昔はダンスホールがあった」
→「一番良いのは海かなー」
→「入り口はないでしょう?」
→「いろいろなところにあるよ」
→知っているのは町の人だけだった
・町の人にとって大事なことはすぐには言葉に上がってこない
→誇るべきものがないと思っているから
→→それだとわからない
→最初は苦労する
→少しずつ話していくと何が大事かを振り返るようになり出てくる
・一番良いものは海だった
→「海を中心にして温泉があり、海を中心にして歩行路があり、海を中心にしてレストランがあり、海を中心にして車が来るようにすればよいですね?それでいいんですね?」
→「そうです。これなら、自分達の言いたいことを全部言えている」
・それを元にストーリーに作った
→まずはパタン
→ガーデンレストランや温泉など、それぞれに独立した言葉がついている
→それらを裏通り、歩行路、松林といったもので繋げる。
・別々のエピソードが組み合わさって1つのストーリーになっている。
→いろいろなエピソードが入っているけどそれが一貫して流れることで理解してもらえる
・作ったストーリーをどうしたか
→このエピソードに基づいて絵を描いた
→これを元に実際に町を作った
◇この事例のまとめ
・コミュニティビジネスとしてパタン・ランゲージを作った
→みんながやる気を出せることを計画
→→それをパタンにした
・みんなのやりたいことを引き出すのがパタン
→それぞれからエピソードを聞いた
→それをまとめて1つのストーリーを作った
・みんなは1つ1つのエピソードをやりたい
→でもそれ単体だけはストーリーになってない
→物語を作る(実施する)人達がいないといけない
→パタンからストーリーを作ることができる専門家が必要
・町の物語は町の人達で作る必要がある
→自分達が作ったものだから納得できる
・パタン・ランゲージはその地域の人達が語る言葉で
→その地域の特殊な条件の中で育てないといけない
・エピソードの一個一個がプロジェクト・ランゲージになる
→1つ1つのエピソードが面白くて1つのストーリーになる
・パタンによる本質的なエピソード
→みんなのこだわりがあってエピソードが出来る
→良い脚本が描けるか、説得力があるか
→1人1人のこだわりがあって、それによって1つのストーリーができあがる
・エピソードを繋げる(パタン・ランゲージを作る)作業はとても難しい
中埜博様、アマルフィアカデミー様、ありがとうございました。
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