2012年5月6日日曜日

『第9回情報デザインフォーラム - 情報デザインのワークショップ』感想

2012/05/04に開催された第9回情報デザインフォーラムの感想です。情報デザインのワークショップというテーマについて、8人の講演者による発表と学生によるパネルディスカッションがありました。以下はフォーラムに参加した感想です。

あと、『情報デザインの教室』は買っておこうと思いました。


◇情報デザイン及びUXの価値が高くなっている

山崎氏が体験とビジネスを結びつけることについて述べていらっしゃいました。木村氏はインフォグラフィックスがコミュニケーションの手段にとどまらず、プロダクトの領域に進出しているという話をなさっていました。浅野氏は「PCをすっとばしてスマホを手にするユーザが増えており、彼らは利用するコンテキストに合わないプロダクトをわざわざ使おうとしない」という話をなさっていました。

また、元IDEOのElle Lunaさんが来日した際におっしゃっていた話の中に「市場の評価におけるデザインの割合が大きくなっている」というのがありました。「そんなところにまでデザインの概念とその重要性が広まっているのか」という印象とともに深く印象に残ったのですが、前述したようにこのフォーラムの中でもデザインの価値が繰り返し取り上げられており、デザインという概念がビジネスのさまざまな領域に織り込まれ始めているのだということを改めて認識しました。



◇人間中心設計とワークショップは親和性が高い

ざっくりとした言い方になりますが、協働するという点において、これらは非常に似ていますよね? 互いの(前向きな)コミュニケーションをとおして成果物を制作するというプロセスは同じなわけです。それから、(けっこう大事なことなのですが)成果物を評価する基準も何か似ているような気がします。

私がメインとしている業務系のソフトウェア開発の場合、利用者とプロダクトの所有者と開発者の利害は著しく一致しないという問題があり、求められるコミュニケーションのベクトルがワークショップのそれとは違うのです。予算と納期と品質と機能があって、それぞれについて三者間での落としどころをひたすら探すというか …そういう観点から見ると、情報デザインとワークショップの親和性の高さは羨ましいです。


◇ワークショップの開催目的をはっきりとさせることが重要

ワークショップをとおして考え方を学ぶ、という話であればワークショップはそれ自体が目的となります。他方、ワークショップをとおして何か有意義な成果物が作りたい、という話であればワークショップはあくまで手段ということになります。前者であればワークショップの参加者に求められるのは参画する意識と必要最低限の予備知識ですが、後者であれば参画する意識よりはきちんとしたアウトプットを出せるだけのスキルが重要になるでしょう。ワークショップを開催するにあたって、これらの区別を行わないということはあまりないでしょうが、もししなければ散漫になってしまうのかな? と思いました。


◇主催者・参加者それぞれがワークショップについての学びを持ち帰ることが重要

ここでいう学びは『ワークショップについての学び』です。

ワークショップ自体はそこそこの歴史があるものであり、学びの手法として強く根付いているものだと思います。そういう意味では、ワークショップというものはなかなかに語りつくされており、それが何であるかという議論も一通り出尽くしているのかな、とも思います。

一方で、このフォーラムの講演でもワークショップにおける体験や経験が未分化のまま語られることがあったりして、まだまだ発展途上で未知の領域が沢山あり、だからこそワークショップについて学ぶことが重要なのかな、と思いました。

ワークショップに参加したけど「あまり発言できなかったし、得るものが余りなかったな~」という経験や、ワークショップを主催したけど「みんなピンと来ない顔をしていたし、ディスカッションも盛り上がってなかったな~」という経験など、こういったものをうまく整理してくれるような概念やプラクティスが揃ってきてくれるといいと思います。


◇ワークショップはあくまで学習の一手段であり、銀の弾丸ではない

ワークショップが何であるかという話や、ワークショップの持つ特性、ワークショップの持つポテンシャルなど、いろいろな観点からワークショップについて語られていました。そういったメリットについての話の総体として、ワークショップは座学を超える学習の手段なのだな、という感覚を抱きました。他方、ワークショップが持つ中毒性を温泉に例えて警告を発している方もいました。また、ワークショップを通して学んでも、それが定着しない組織がある、という発言もありました。で、良いところと悪いところをまとめると、ワークショップが有益であることは間違いないが、それは適切な使い方があってこそなのだと思いました(当たり前のことですよね)。

また、ワークショップは協働という形態を取るので学びを共有することは必須です。なので個々人が学びを深堀りする必要があるテーマの場合や、学びに個人差が生じやすいようなテーマの場合、ワークショップは逆に弱いのかな? とも思いました。








後援者の皆様, パネルディスカッション発表者の皆様, 主催者の皆様, ありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿