2012/05/04に開催された第9回情報デザインフォーラムのノートです。素晴らしい講演がたくさんあった。だからその講演内容を的確にまとめてみよう…! と考えていたのですが、見返すとノートの半分は私の感想でした。
なお、当フォーラムのテーマは『情報デザインのワークショップ』であり、8人の講演者による発表と学生によるパネルディスカッションがありました。パネルディスカッションはただただ見いってしまったので、ノートはありません。
なお、当フォーラムのテーマは『情報デザインのワークショップ』であり、8人の講演者による発表と学生によるパネルディスカッションがありました。パネルディスカッションはただただ見いってしまったので、ノートはありません。
◆オープニング
情報デザインのワークショップという本を作るために資料を持ち寄って集まったら、その資料の内容がよくて、だったら発表しようじゃないか …という流れで今日があります。という話でした。ハイスキルな人同士が集まっているからこそ成り立つ、この頂上決戦的な流れは好きです。
◆第一部 大学でのワークショップ
◇山崎和彦氏 - 『情報デザインのワークショップ・プロジェクトと体験ワークショップ事例』
体験という言葉とワークショップとの関係性についての話がメインでした。たしかに、参加者が体験をとおして『学び』を得るという、ワークショップが持っている特性を語るのであれば、『体験』が持つ意味や価値について論じるのは重要なことだと思いました。特に印象に残ったのは「ワークショップを誰とするか?」という話です。割とあっさりと触れただけだったのですが、このくだりを聞いて、私が持っているワークショップという概念についての認識は飛躍的に広がりました。 …というよりは、自分の体験によって植えつけられたワークショップという概念についての認識が矯正されたというか。人と人のコミュニケーションを通して作り上げていくものがワークショップである、というあたりまえの点について自分の中で勝手に枷を作っていたのだな、と反省することしきりでした。
以下、メモ。
・ワークショップは知識を得る場所ではなく、作り上げて本当の学びの楽しさに目覚めるためのもの。
・ワークショップは知識を得る場所ではなく、作り上げて本当の学びの楽しさに目覚めるためのもの。
・ワークショップでは『体験』することが重要。つまり、ワークショップ自体のデザインが重要になる。
・ワークショップにおける体験の分類
・ワークショップを誰とするか
- 自分が体験
- チームと一緒に体験
- ユーザの体験をする … デザインのワークショップでは重要
・ワークショップを誰とするか
- デザイナ同士
- デザイナ・ユーザ間
・体験とワークショップの関係
- 体験を観察するワークショップ … 相手を理解する
- 体験から発想するワークショップ … アイデアを広げる
- 体験を視覚化するワークショップ … 個人的な作業を共有・評価し広げる
- 体験とビジネスを考えるワークショップ
- 体験と社会環境を考えるワークショップ
・ワークショップの目的
- 学ぶ楽しさ・自主的な学び
- 発想の拡大・視点の広さ
- 共有・合意形成
- 相手の理解促進
◇原田 泰氏 - 『インフォグラフィックスを通して学ぶコンテンツ・デザイン』
図や絵は言葉と同じであるという価値観を持っているということをおっしゃており、実際にスライドの中で使われているインフォグラフィックスを見ると、ポテンシャルが高い表現技法なんだな、と興味を惹かれました。
- インフォグラフィックスの制作工程
1-1. 現実
1-2. 解体
1-3. 再構成
1-4. 表現
1-5. 魅せる/反応
↓
(フィードバック)
↓
2-1. 現実
2-2. 解体
…
- この説明の際に使用している図が印象的でした。現実をパズルのピースのように解体しそれを再構成している図なのですが、メッセージがとても明確に伝わってきて、それが非常に印象に残りました。後で参考にしようと急いで描き写したのですが、私の描いた絵はまるで小学生の落書きみたいな感じになっていて、当初の意図とは異なる”味”のようなものを醸し出していました。スライドの写真を撮っておけばよかったとつくづく思います。
- コンテンツ・デザインはメッセージを自分の言葉で表現し人に伝えるものである。
- インフォグラフィックスの利点は『人に伝えることができる』『次の工程で再利用できる』ということ。
- このような教育を行なう意図 ・ラピッドプロトタイピングをする体質を作りたい
・自らフレームワークを作り、使いこなせるようになって欲しい
インフォグラフィックスの視覚言語としての表現力と可能性を目の当たりして、モホリ・ナギのフォトモンタージュ作品やその造形理論をおさらいし直したいなー、とか思いました。
◇上平崇仁氏 - 『デザインワークショップの故きを温ねて新しきを知る試み』→『昔の事例を再解釈して新しいデザインワークショップをやってみた』
過去の人達が作ったり実践したデザイン性の高い作品・授業・ワークショップを元にして、ワークショップを作成しているという話をしていました。そして、ワークショップを作り実践する中で浮き上がってくるものを指して「過去の事例から変わらない大事さが見える」ということを言っていました。時代を越えて普遍な大事なものがあるよね? ということです。また、過去のワークショップに学ぶことについて「そうしないと先人の実践が埋もれたままになってしまう」といった趣旨の話をしていたことも印象的でした。
そのほかにも、ワークショップやその周辺の概念についての見解を述べていたのですが、この点についても関心することしきりでした。一方的に教えるというやり方のデメリットの話から、これを裏返す形でワークショップを選択することの理由を導き出したりしており、私は見事に説得されました。
以下、メモ。
- 何故ワークショップか? 『人は言えば聞き、聞けば理解する』わけではないから。
- 学びは、知識をためるものではなく、社会的に構成されるべきもの。
- 教えることにはデメリットがある。教わる側に固定観念ができ、それによって思考停止してしまう。だから、教えるより自分で学ぶ(ワークショップの)方がよい。
- ワークショップのツールに重要なこと。道具になっていて、参加者がお互い確認ができるというオープン性があること
- ワークショップには限界がある。参加することでやった気になるが、自信には繋がらない。また、ワークショップ中毒者というものが存在しており、彼らは週末温泉に行くかのごとくワークショップを利用している。
・ワークショップの構成要素
- 身体
- 協働
- 創造
- 共有
- プロセス重視
・ワークショップのポイント
- 先生はいない
- 客ではいられない
- はじめから答えがあるわけでない
- 頭とからだが動く
- 交流と笑いがある
・ワークショップの切り口
明確に切り分けできないが、次の2つがある。
- ワークショップを通して何かをデザインする
- デザイン手法や考え方をワークショップで学ぶ
・まとめ
- デザインにおいてワークショップと実践は同等
- 過去の事例から変わらない大事さが見える
◇安藤昌也氏 - 『写真を使った価値マップによるサービスアイディア発想』
サービスデザインの領域がだんだんと拡大しているという話と、ワークショップに適用する概念として『AT-ONE』というものがあるという話をしていました。で、後者の『AT-ONE』についてUXをする人が陥りがちな点と、重視すべき概念について話をしており、なるほどなーと思いました。
以下、メモ。
・サービスデザイン領域の拡大
- 『ニーズの充足』自体を価値とし、それを提供
- 『欲求の実現』体験した人が感じることを価値とし、それを提供
- 『意識→参画→価値』価値ではなく機会を提供
・AT-ONE
- Actor 登場人物を広く
- TouchPoints どうつなぐか
- Offering 何を提供しているか
- Needs 本来満たすべきニーズは何か
- Experience
・AT-ONEのポイント
- Offeringが重要。
- Offeringを正しく導けば、正しいActorやTouchPointsを導くことができる。
- UXはNeeds, Experienceを考えがち。
◆第二部 社会人のためのワークショップ
◇木村博之氏 - 『インフォグラフィックスは自分で考え行動させるためのキッカケデザイン』
インフォグラフィックスやコミュニケーションの手段に留まらずプロダクトへ適用範囲を広げているという話が大きかったです。デザインが求められる領域がどんどん広がっているというか、デザインに対するリテラシが大きくなっているのだな、という話です。個人的には、デザインに予算を投下できないようなプロジェクトでも、それなりのデザインを持っていることは大前提になるのではないか? という気がしています。私はそちらの方がいいので、情報デザインやユーザエクスペリエンスという技術が、世界にあまねく浸透し広がってくれることを本当に期待しています。また、ワークショップに参加することについて述べた際に「自分で考え行動するためのきっかけでしかない」と言い切っていたのが非常によかったです。
以下、メモ。
・フレーミング・リフレーミングが重要
・インフォグラフィックスの作成手順
(だいたいこんな感じだったような…)
- 伝えたいことを決める
- データを集める
- 伝えたいことを再考する
- 表現を考える
- 情報を絞り込む
- レイアウトを考える
◇小路晃嗣氏 - 『組織におけるワークショップの目的とその運営のためのポイント』
組織とワークショップという、私にとってピンポイントかつ即効性があるという非常に気になる講演でした。内容も期待を上回る素晴らしい内容だったのですが、全体としてメモがぜんぜん追いついていかなったという… 非常に残念です。「もっと大事な情報がたくさんあったような気がするのだけど…」と、ノートを見返す度に思います。スライドが公開されることを祈るばかりです。また、『ワークショップ開催のポイント』の箇所のスライドで、皆がカメラを取り出して撮影しまくっていたのは非常に印象的でした。私も確固たる決意を持って撮影に望めばよかったと思います。
・ワークショップの開催は継続して行なうことが大事、というのが結論。
・ワークショップには縦割りの組織の中で機会がないような人々が会う、というメリットがある。
・会社では費用対効果が求められる
・ワークショップ開催のポイント
- 儲けること前面に
- 責任と範囲を明確に
- 継続できるように
- 収支バランスを図る
- 税で社会に貢献する
・ワークショップ開催の合理的な側面
- マニュアル化して誰でもわかる(開催できる)ように
- レビューと改善を行なう
・ワークショップ開催の俗人的な側面
- メソッドやガイダンスとして余白に表現する
- 人間力によるOJTを行なう
◇脇阪善則氏 - 『UX TOKYOとワークショップ - サード・プレイスとしての機能と役割』
『ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング』の翻訳者です。非常にためになる本で、たびたびお世話になっております。今回は『UX TOKYO』を基点として、ワークショップの機能と役割について述べていました。特に印象に残ったのは、ワークショップを開催・洗練させていく中から非常に具体的な成果物を作り出す、という展望に関する話です。私にも計画的にものを見る視野が欲しいと思いました。
以下、メモ。
・ワークショップとは
- 本の学びを実践する場
- 実践の場
- インプットした知見を消化してアウトプットする場
- 新しいことに挑戦する場
・ワークショップを通して経験の蓄積ができる
- 実施
- デザイン発想
- フレームワーク化
- 技術仕様化
◇浅野 智氏 - 『企業にHCDを根付かせるワークショップとその開発』
『何かを教える』ということと『教えるということについて責任を持つ』という点について、非常に印象を受けました。私の持っている価値観に「『何をすればいいか?』よりも『何故そうしようと考えるのか?』という、その人の持っている行動原理や価値観に触れたり想像できることが非常に重要である」 …こんなものがあるのですが、この講演はこの点について強く働きかけるものでした(あくまで私の印象です)。また、講演内容には実用的な内容も多々含まれており、学びがたくさんありました。
なお、特に強く印象に残ったのは、HCDを教えるためには7回のワークショップが必要ということと、この点については絶対に譲れないというものでした。つまり、「3回でやってくれませんか?」というお誘いがあっても、HCDを教えるためには7回のワークショップが必要なため、断固として無理、という話です。『断る』『譲らない』という行動や価値観について、私にはここまでの力強さがありません。だから印象に残りました。
また、ワークショップの構成についての考え方も参考になりました。
- 概論について講義し、以降の学びのメンタルモデルを形成する(これは絶対必要)。
- 全体像がわかるワークショップを行なう。
- 以降は個別のテーマについてワークショップ。結果がでやすいものから行なう。
その他、メモしたポイント
- ワークショップは楽しいことが大事。
- ワークショップを作る時はただ思いついたものではなく、もっと長いスパンで教えているようなものを落とし込む。
- ワークショップでの学びが根付くところとそうでないところがある。社内に強力な推進者がいるところなら根付くが、トップダウンでやっても定着しない。
後援者の皆様, パネルディスカッション発表者の皆様, 主催者の皆様, ありがとうございました。
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