2012/06/07に開催された、『【shibuya meets tech 4】アナタに一番合うアイデアの生み出し方、 育て方、ゴール』ノートの冒頭1/3です。ノートというか、ほとんど会話のようになってますが…
20120607 shibuya meets tech vol. 4
講演者
Appcelerator Inc. 増井雄一郎氏
株式会社ユーザーローカル 閑歳孝子氏
渋谷lab 鈴木氏
主催
渋谷lab
会場
Lightningspot
◆講演者による自己紹介
◇増井雄一郎氏
- 昔は PukiWiki というオープンソースアプリの開発をしていた
- 10分でRuby on Railsでwebアプリを作れるという、嘘のムービーを作った(けっこう好評だった)
- 四年前、渡米しiPhoneアプリを作る会社に
- いまはTitaniumを作ったAppceleratorにいて、プラットフォームエヴァンジェリストをやっている
◇閑歳孝子氏
- もともと出版社で書く仕事をしていた
- インターネットが好きで書くより作る仕事がしたかった
- 友人の紹介でwebの受託開発をしている会社に
- 4年前に今の会社(ベンチャー)に
- 会社ではアクセス解析を作っている
- 個人でZaimというスマホアプリを作っている
- 考えるところから作るところまでやっている
◆theme / 自分向け vs 一般の人向け
鈴木
「作る前のフェーズではアイデアとか発想が重要だと思うのですが …アイデア出しで重要だと思っているポイントは?」
閑歳
「私は作れるようになったのがすごく遅かったんです。作りたいけど作れないというストレスが10年くらいありました。『作れるようになったら、いっぱい作りたいものがあるのに!』というところから発想しているのでちょっとアレなんですけど…
自分でサービスを作るようになったのは、どこにいっても『あなた企画(の人)でしょう?』と思われていて、自分で作れるということを信じてもらえなかったからです。今は全然違うんですけど、始めはそれを証明したいというのもありました。
気をつけているのは『なんでアイデアを出さないといけないのだろう?』ということ。アイデアを生み出す前に『アイデアを出さなければいけないのは何でだっけ?』というところをすごく考えるようにしています。『楽しみで作っているのか?』『ビジネス的な意味で作っているのか?』『目的みたいなものががどこにあるのか?』とか。
もうひとつ気をつけているのは …自分が一生懸命になれるテーマを見つけるのが一番大変だということです。自分の『これは本当に解決しなきゃいけない』『これは問題だと思っている』と心から思えるような、問題設定みたいなものや夢中になれるものを見つける、ということです。そのテーマを見つけるのが一番重要で、生み出すのはもうちょっと後だと思っています。
自分は作りたいものが決まっていて、『普通の人が使えるものを作りたい』というのがすごく大きい割合です。なるべく多くの人に使ってもらおうと思っていて …今の時代は自分の母親くらいの年齢の人でもスマホを使いますが、『そういう世代でもぎりぎり使えるかな?』というのが1つの基準になっています。
できれば『それがないと死ぬ』というくらい、その人の重要なテーマになるものを見つけたいと思っていて、最近だとそれがZaimだったんですけど …そういう形でテーマを決めることが一番重要だと思っています」
増井
「私は、普通の人というより、もっと個人的な悩みでものを作っていて… 自分でやるときにすごく使いにくい、面倒だとか、そういうものを書き留めていって。
私は基本的にエンジニアなので、自動化できるものは全部自動化したいし、人の手でやらなくていいものは全て自動化してしまいたいという。で、繰り返すようなものは少々面倒でも自動化したい。という思いがあるんです。
そういうものをベースにアイデアを出しているのですが …自分でこんなものを作りたいという、アイデアリストをウェブに公開していまして。Web上にあるToDoリストなのですが、『こんなのあったら面白いな』とか『こんなのやってるのすごく面倒だな』というものを書き溜めています。
例えば『増井予約システムのサービス化』というものがあるんですが。仕事で『スケジュールのやりとりをするときに『打合わせをしましょう。いつといつが空いてますか?』といったことがあると思うのですが、メールでやっていると返事を待っている間に日程が埋まってしまったりして …何度もやりとりをしなければならないんです。
それをするのがすごく面倒だったので、自分をものに見立てて空いている時間を予約できるようにして、『カレンダーのURLを送るので、僕と打合わせする日を勝手に予約してください。入れてくれればgoogleカレンダーに入りますので』というものを作ってシステム化したりとかしています。
基本は自分が使うもの。他人に使ってもらうものというよりは、自分が使うようなものを中心に作っていますね」
閑歳
「発想が真逆ですよね。どっちもありというか、やりやすいほうをやればいいと思うんですけど …私は逆にそういう発想でものを作れない人なので」
増井
「逆に僕は他の人を考えるとものを作れないので …自分が面倒くさいことを自動化したりとか、私的な思いだけです。
僕は技術なので、技術が主体でものをつくることもあって、何か新しい技術がでたら、『それ面白い技術だな。それで何か作ってみようか』とか。
数年前、『node.js』が出始めた頃に『それ使って何が作れるんだろう』と、よくあるチャットを作って遊んでみたりとか、技術主導のときもけっこうありますね」
閑歳
「私の場合、逆に作りたいもののぼんやりとしたイメージがあって、それを実現するためにはどうしたらいいんだろう?みたいな風に考えていって。
私はスキルセットにすごい足りない部分があるので、スマートフォンで家計簿を作りたいと思ったときに『Objective-Cだと書けないところがある。どうしよう?』となって、Titaniumを使おうかなという …それは本当に、自分のスキルセットとなんとかやりたいことを実現するためのツールとして、探して選んだというところがあって。
本当に、アプローチの仕方は真逆なのかな?という気はしますね」
増井
「自分として『ほかの人むけ』というのはないのですが、人の『こんなのがほしいな?』というものを『じゃあ形にしてみようか』とか『もう少し深堀してみようか』というの話はたまにあります
(ここで、友人の為に考えたサービスの話をする)」
閑歳
「それはどう作られたんですか?」
増井
「いや、それを作るモチベーションがなくて …作ってはいないですね。面白いだろうな、とは思うんですけど」
閑歳
「聞いていて、私はぽんぽん作れるタイプではないのかな?と思って
…Zaimを作るときも準備期間というか、一番始めに作ろうと思ったときに、TechCrunch.comを1年分くらい読んだんですよ。『シリコンバレーでどういうサービスが流行っていて、いまどういう状態なのか?』『それは日本でどれくらい流行るか?』というのをひたすら見ていて …で、『どうやったら日本で流行るものが作れるのかな?み』たいなところをひらすら考えて
…で、『家計簿を作ろう』と思ったときも、あまり人には言わないで。ずーっと1人で考えて、外にはあまり出さなくて。これ以上考え付かないというくらいになったら、ちょっとずつ友達とかに聞いていって、そこで始めてブラッシュアップされるというか。ちょっと考えて簡単にでてくるようなものは、いちおう全部を自分で考えてからにしよう …というような感じですね」
◆theme / 技術ドリブン vs リリースドリブン
増井
「僕は(閑歳氏とは)逆で、webに出しているアイデアリストもそうなんですけど、思いついたら外に書くしtwitterとかにもがんがん書いて。
さらに、さっきのリストはiPadに全部入れてあるので、お客さんと打ち合わせしたときとか、懇親会とかでそれを出して …人を引っ張り出して話を聞いてですね、でフィードバックを得て、自分で詰めて言って、面白そうなものを他の人のアイデアも含めてやっていくという形で。
基本的に自分で考えるよりは、話して反応を見て考えることが多いですね」
閑歳
「(Zaimは)今は運用なので、そういうスタイルをけっこうするんですけど、始めのアイデア出しのときはそうするのが苦手なのかな? と。今はユーザからの意見などで助けられている部分もあるので。
…Zaimは一般ユーザというか、あまり詳しくない人を相手にしたかったのですが、そういう人達に
紙ベースの画面イメージを持っていっても、あまり想像が付かないみたいで。『えーこれどうやるの?』みたいな。やっぱり動くものを持っていって初めて、彼女達は『こういうものなのね。ここがダメだと思う』と言ってくれたりするので …ある程度作っていかないとダメなのかなという意識はけっこうあります」
増井
「僕のアイデアはテック系のものが強くて一般向けではないので、とりあえずフローチャートを見せれば概ね納得してもらえるんです。最悪ホワイトボードがあれば事が成り立つ、というのもありますね」
閑歳
「アイデアの種類によって適切なやりかたがあるのかな?っていうのを、話を聞いていて思ったんですけど」
増井
「このまえニコニコ超会議で話をしたのですが、その時に『作るのは面白いんですけどアイデアがないんです』ってエンジニアがけっこう多かったんです。でも、よくよく聞いてみると自分ではアイデアだと思っていないだけで。『これ使いにくいんです』と言う人に『ではどう改善したらいいと思いますか?』と聞くとけっこうアイデアが出てきたりして。
不満ドリブンというか、『こんなの使いにくい』とか『いつも同じことをやっていて面倒くさい』とか、それを改善していくのは1つのアイデアになるんじゃないかな、と思います」
閑歳
「私はまたけっこう発想が違っていて …リリースドリブンなんですよ。もしプレスリリースで取り上げられるとしたら、どのように取り上げられるか?とか、どういう見せ方になる?というのを想像しながらやっているというのはありますね」
◆theme / アプリのリリースとその取り上げられ方
閑歳
「機能拡張するときとかも、『これくらいのネタだとプレスには載るけど、これくらいの小ささだと取り上げられないかな?』というのがあるので、リリースになるような合わせ方をするよう気をつけています。
Zaimもアンドロイド版を作っただけではちょっと弱いかなと思ったので、急いでevernote Syncみたいなものをつけて"android + evernote"という形でニュースにしてもらったりとか、けっこう工夫しています」
増井
「そこはリリースすることが目的だから、ですよね」
閑歳
「いや、リーチを上げることが目的だからですね」
増井
「僕は自分が目的なので、自分が使える満足してしまうところがあるので …あまり他人にどう思われるかよりは、自分として納得できるものを作りたいというのが大きいので。
技術が先行するところもあるし、技術ドリブンなところもあるし、技術として検証したいというところもあるので、そこまで …リリースまで頭が回らないこともありますね」
閑歳
「そこまでは回さなくてもと思います …あ、でもこの間出されたRubyの奴とかは?」
増井
「あれは完全に狙っています」
閑歳
「バズるような形で…」
増井
「出しているという」
◆theme / リリースの目的
増井
「いま僕が一番作っているのはMobiRubyという、iPhoneやandroidのアプリをRubyでかけるというツールなのですが、開発キットなので最終的にはオープンソースで出すつもりです。
さっき言ったように、これを作ることそのものが結構目的で …仕事をするにあたって海外での認知度を上げたい、ということを目的にしているので、今まで自分が作ってきたものとはちょっと方向性が違いますね」
閑歳
「目的がはっきりしていて『どういう玉を投げたら一番よくあたるか』というのを計算してってことですね」
増井
「そういう意味で同じなのは昔作ったPukiWikiで、あれはモノや技術というよりも、自分としては開発手法そのものをやりたくて。オープンソースのエンジニアリングをどう回すかというアイデアがベースもあって、それを検証するために近いところでPukiWikiを作っているという。
PukiWikiを作るチームそのものが成果物で、その副産物としてアプリケーションがあるというような感じになっていますね。なので、アイデアといってもモノがアイデアだったり手法がアイデアだったりいろいろあると思いますね」
◆theme / アイデアを形にするやり方・追い込み方とライバルの蹴落とし方
閑歳
「頂いた質問で多かったのですが、『アイデアを形にするというところで、気をつけるところは?』」
増井
「これすごいは簡単で、朝から晩までコードを書け、と。
MobiRubyには自分個人の時間をほとんど充てていて、僕はお風呂でもコード書いたりするので、
MacbookAirをお風呂の蓋にのっけてずーっと書いてたり …後は移動中の電車でも基本的にはコードを書いているので、もうひたすら時間を使って形にしているという」
閑歳
「さすがに風呂はやらないですけど、電車はやりますよね。電車で職場までちょうど30分なんですよ。なので『よし、ヨーイドン!』って言って作るみたいな感じでやっていますね」
増井
「自分ではできないこともたくさんあって …アイデアがあっても自分で書くのは難しいので、あちこちで話をしていたら『知り合いにそういうことをやっているところがあるので、一緒にやりましょう』とか、そういうこともしていますね」
閑歳
「それはいいですね。そこからアイデアが出てくるというか、元々のアイデアに対してさらにアイデアに対してさらに実現方法が降ってくるという …口に出すって大事ですね」
増井
「そうですね。僕はプロトまで作って飽きることがすごい多いんですよ。大体、ほとんど完成しないで技術検証が終ったところで飽きるんです。なので、技術検証まで終ったものをその状態で他の会社に売ってしまって、そこで製品にしてもらったこともあります」
閑歳
「私自身は書いたことはないけど、漫画や小説も書き上げるのが難しいのではないか?と思っていて。『ようし、小説を書くぞ!』って中学校二年生くらいのときに1回くらい思ったことがある人ってけっこういると思うんですけど、最後まで書ききった人はあまりいないのではないか?と思っていて。
それと同じで、アプリケーションとかサービスも、最後まで到達してリリースするというのがすごく重要かなと思っていて。私もAppStoreの申請方法とか、アプリやサービスをリリースするまで知らなかったし、何回かやっているうちに勘所がわかってきてなるべく失敗しないようにはなるので …そういうことをやったことが無いという方は、やってみるとすごい勉強になるのではないかなと思います」
増井
「MobiRubyも技術検証ができた段階でページを作っていて …あれはある意味、自分を追い込むためと、他の人を蹴落とすため、というのがあって。
先に言ってしまうと作らなければならないというのと、同じことをやろうと思っている人に『もうやっている人がいるから止めよう』と思ってもらうため、というのでページを作っています。」
閑歳
「それはすごいわかります。
私もZaimは1人でやっていたんですけど、コンテストに応募して締め切りが突然できて、そのときは1行もコードを書いていなかったんですけど、なんかデモしなければいけないというので、やり始めたんです。で、最初はウェブサービスにしようと思っていたんですけど、いろいろと友達に聞いたら『今だったらスマートフォンの方がいいんじゃないの?』と言われて、そちらに切り替えた、ということがありました。
後は、先行予約とかは他へのジャブになったりすることもあるし、ユーザのニーズもそこでわかるし、(リリースより)先に(意見を)言ってもらえるので、そこでチューンアップをしたりできるので、けっこうお勧めです」
増井
「僕は10年くらい前にはマニュアルから先に書くというのをよくやっていて、それに合わせてソフトを作るというのをよくやっていました」
閑歳
「仕様書みたいな感じなんですね」
増井
「仕様書というか、マニュアルってユーザのストーリーじゃないですか」
閑歳
「いいですね。マニュアルドリブンですね」
増井
「大学時代はマニュアルドリブンでソフトウェアを作っていました。先にマニュアルで説明してしまって、それを最終的にモノにしていくという形でやっていました」
◆theme / アイデアのスケッチ方法
閑歳
「アイデアを形にする段階でどういうツールを使っていらっしゃるんですか?」
増井
「いや、ぜんぜん普通ですね。 …そういえばマインドマップをよく書くんですよ。今回話す内容もこうやって(iPhoneのアプリで)上げてあったりするんですが、どんどん絞り込んでいくためにマインドマップを書くのはよくやりますね。使うツールはほとんどこれくらいですね」
閑歳
「紙とかペンは使わないんですか?」
増井
「あー、自分の名前を書く以外はここ数年ほとんどないですね」
閑歳
「私は基本、紙なんですよね、あとevernote。
画面の感じを書くのはどうしても紙のほうがうまくいくような気がして …会社でもそうなんですけど、必ず紙に1枚ずつ書いていくというのをします」
増井
「僕はそういうのもiPadですね。普通の手描きツールで。基本的には全部電子でやっていますね。そうしないとお風呂に持って入れないので」
閑歳
「私も、紙に書いたものも最終的にはpdf化して取り込んでいます」
増井雄一郎様、閑歳孝子様、渋谷Lab様、Lightningspot様、ありがとうございました。
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