2012/06/07に開催された、『【shibuya meets tech 4】アナタに一番合うアイデアの生み出し方、 育て方、ゴール』ノートの最後の1/3です。
20120607 shibuya meets tech vol. 4
講演者
Appcelerator Inc. 増井雄一郎氏
株式会社ユーザーローカル 閑歳孝子氏
渋谷lab 鈴木氏
主催
渋谷lab
会場
Lightningspot
◆theme / 体験談。開発でつまづいたとき
増井
「Zaimの開発でつまづいたときにどう対処したか?」
閑歳
「どうしたかな? …すごい考えつくすところがあって、どうしても駄目ならあきらめるというところまでは考えますね。なんとか自力で頑張ろうというところがあって。
ググって駄目だと諦めがつく、その為に見るというのを最近覚えたんですけど …どうしても分からないところとかをググってみて、誰も解決していないと『あーみんな駄目なんだな』というので諦めがつくという。同じところで悩んでいる人がいっぱいいるんだな、というのが分かるんです」
増井
「僕は平均して5個から10個くらい作りかけのものがあるので …詰まると他のものにスイッチしして、しばらくたって見直してみるとうまく動いたり、新しいライブラリがでていたり、ライブラリのバージョンアップで解決してくれていたりとか。ストレス解消も兼ねて、躓いたら他のプロジェクトに移ることが多いですね。
閑歳
「私の場合はデザインに逃げますね。デザインも自分でやるので。デザインができていないとすごいモチベーションが低いんです。デザインが入ると『あっ、もう少しでできる』という気分になります。
コードを書いていてちょっとダメかもと思ったら、デザインを入れて …それで『もう少しでできる』というのと行き来しています」
◆theme / 体験談。日米のビジネスの違い
増井
「ユーザの種類や行動がかなり違います。例えば写真をシェアリングする場合、アメリカなどの国の人は絶対に自分や他の人などを入れて写真をとるんです。食べ物をとるなら食べるところにして絶対に人とものが入るようにしていたりとか …日本人って基本的にはモノが動物しか撮らないんですよ。ほとんどフレームには顔を入れないって感じで。
そういった部分の違いというのはやってみなければわからないし、それでサービス設計も変わってくるので、そういう意味で海外向けのサービスをリリースするというのは面白かったですね」
閑歳
「プロモーションの違いもあるんですかね? TechCrunchとかでスタートのページを見るんですけど、日本と明らかにつくりが違うじゃないですか?あっちではこういうのがウケるんだろうな、というのは分かるんですけど、ピンとこなくて…」
増井
「特に思ったのは、海外で載るか載らないかというのはほとんどコネなので。ページを作るのもPR媒体に頼んでいたりするので …シリコンバレーなんかは、けっこういいものを作ると取り上げてもらえるみたいなイメージがあるのですが、そういうのはほとんどなくて、ほとんど大人とお金の力で解決しているような感じは強く受けました。
もちろんコネだけではいけないと思うんですけど、コネがないと、そもそもいろんな人に見てもらえないというか …一番始めのパブリシティも確保しにくい。ここは日本より難しいかもしれないですね」
◆theme / 公私の切り分け
増井
「ぜんぜん切り分けてないですね。MobiRubyは会社に話をして最終的に確認をとった上で完全にプライベート、という形でやっていますね」
閑歳
「私は普通の会社員なので、業務時間内は一切自分のことはやらないようにしています。メールも見ないし …それをやると申し訳ないかなという気持ちがあるので。家に帰ってからと、土日をずっとやっているという感じですかね」
◆theme / 業務外の活動と仕事との相乗効果
閑歳
「ありがたいことにいろいろ呼んでもらったときに社名を言えるので、なんとか役に立っているという気がします。
うちはBtoBの商材を取り扱う会社なので、あまり知ってもらう機会がないのですが、知りあいになった方から仕事に繋がるということがけっこうあったので …それはありがたいです。
逆の立場からすると、会社でやっていることはアクセス解析なのですが、家計簿もアクセス解析みたいなもので、データを溜めて分析する、しかも分析するっていうところで、いままですごく頭のいい人達が作っためちゃくちゃ難しい製品が多い中で、すごく簡単に見せるというのはけっこう似ていて、、そんなときに今まで仕事でやってきたことが役に立っているかなと思います」
増井
「今の会社に入るきっかけというのが、今の会社の社員がオープンソースの開発をしていて、そこに僕がコミットしていたからなんです。自分でライブラリを作ってリリースしたりしていたことなどが今の職に繋がっていますね」
◆theme / 個性を伸ばす方法
閑歳
「個性?」
増井
「別に個性なんかないですよね?」
閑歳
「自分のこと個性的だと思ったことあります?」
増井
「言われることはありますけどね、自分で好きなようにやっているだけですからね。人と変わったことをやろうと思っているわけではないんですけど」
閑歳
「個性って難しいですよね。何を持って個性なのかっていう」
増井
「世の中のほとんどの人はアプリを自分で作ってリリースしないじゃないですか?じゃあどうして自分がアプリを作ってリリースしたのか、そういうのを延ばす方法について」
閑歳
「メディアにいたせいもあるかもしれないけど、メディア的な考えをすることが若干あって。
個性なのか分からないんですけど、自分のアイデンティティというか、けっこう思っているのはロールモデルを作ったらだめなんじゃん?と思っていて。ロールモデルがいて、そのとおりに歩いてしまうと、それは誰かが歩いた道で、自分じゃないというか。誰かの真似をしているという風になってしまうとちょっともったいないかなと思っていて。
ロールモデルがいないようなところをあえてやっていくというのは、社会的な意味の自分を作るには結構重要じゃないかなと思います」
増井
「基本的には自分のやりたいことだけをやって、自分のやりたくないことをどうやらないですごしていくかがメインなので。
(中略)
そういう風に自分のやりたいことをやりたいようにやる。という感じですね」
閑歳
「みんなは、そういうことを普通はストレートに言わないじゃないですか。それでダメなケースもいっぱいあると思うんですけど …そうやってやっていくと、能力があがってとか、こういうところが優れているから、なんかこう、パズルのピースみたいに、ここは上がっていてここは下がっているけどこことピッタリ合うというような、ことが分かってくる気がするので、あんまりその自分が本当にやりたいことというのを隠すというか、我慢しない方がいいんじゃないかなーとは思います」
増井
「ただ、そこは何かが飛び出てないと許されないので、そういうために技術的な部分はなるべく担保するようにしていますね」
◆theme / 増井さん個人
増井
「最近は自分の時間のほとんどをMobiRubyに使っています。Rubyは15年くらい使っているんですけど、ぜんぜん貢献(コミットメント)もしていなくて、ここらで何かしたいと思っていた。そういった状態で組み込み用のRubyという新しい実装が出て、まだ触っている人が少ないので、まだ手を出せるところがある。現行のRubyだとみんな手をいれすぎていて、きちんと研究していかないと手をつけられないので …使える時間の九割くらいをmrubyのデバッグと、MobiRubyを書くのに使っています」
閑歳
「例えば …キャリアパスとか考えてますか?」
増井
「ぜんぜん考えてないですね。でも、個人的な目標として、今日全部の仕事とかコンピュータが無くなったとしても、明日から仕事ができる、というのが個人的な目標で。そのために、今需要がある技術を持って、どこがその技術を押しているか、それを誰に言えば僕を買ってくれるのか?という三点についてはなるべく常に情報を持っているようにして、何かがあって今もっているものを全て失っても、どこかの会社にしばらく仕事が欲しいんだけど、と言えば仕事がもらえるようには気をつけていますね」
閑歳
「それはプロデュース力というか、自分をうまくコントロールするという感じなんですかね」
増井
「コントロールするというよりは、どちらかというと売り先を探すほうですね。
人と合うのがけっこう好きなので、あちこちの会社にさっきのリストをもって遊びに言ったりとか、そういうのが好きそうな会社があったら、全然関係ない会社でも「ちょっと遊びに行きたいんですけど」と言って遊びに行ったりとか。そういったことはかなり細かくやっていますね」
閑歳
「10年後とか20年後何をしているかとか」
増井
「全然想像つかないですね。そもそもこんなふらふらした生活をするとは考えていなくて。普通は年齢が上がると生活ってどんどん安定するじゃないですか? ちゃんと就職して、結婚して子供ができてと、ある程度普通に線がわかるじゃないですか。結婚してからずっと不安定さがあがっていってて、どんどん明日がわからなくなる。前は1年後何しているかはだいたい見当がついたのですが、最近は半年後にどこで何の仕事をしているか想像つかないレベルになっています」
閑歳
「それはそっちのほうがぜんぜん楽しいという感じもあるんですよね?」
増井
「そうですね。ぜんぜんそこらへんはストレスにならないので。普通の人はストレスになるらしいのですが僕はストレスにならないので」
閑歳
「1年後の自分が全く同じことをやっていたら、けっこう絶望しますよね?」
増井
「まあそうですね。フリーランスでも、ある程度長い仕事を請けるじゃないですか? メンテナンスも含めて1年とかって。 僕はメンテナンス仕事が好きじゃないので、単発の仕事を取るんですよ。メンテナンスはその会社に投げられるようにして、受けないんです。Appceleratorには一年半いますが、こういうことは珍しいんです」
◆質疑応答 1.
参加者
「チームでブレストをやるんですけど、なかなか盛り上がらない。盛り上げ役があれこれ言うことで盛り下げることもよくある話で …そういうときどうやって発想を広げていくのか、また、ブレストはチームで何かを相談していく部分なので、(チームに)対して教えられるようなことで、何かやっていることがあれば」
増井
「基本的にはチームで発想を0からやるのは難しいと思っていて、ある程度幹の部分ができていて、それにどう味付けをするかはできるが、基本的な部分の考え方というのはたぶん、誰かが主題を作って、みんなでどうもっていくかというように持って行くようにしている。さっきのオープンソースの話もそうですけど、基本的には基礎の部分だけは自分できちんと提示できるようにして、それをみんなで議論していこうと。最終的に全然違うものになることもあるのですが、そういう風に心がけています」
閑歳
「私も増井さんと全く同じ意見で、アイデアを出す場合は一人の思い込みやパワーがあるものの方がうまくいっているじゃないかなーと思っていて。幹の部分は一人の人が考えた方がいいかなと、考えています。
ただ、アイデアがでやすい雰囲気とか方向はあると思っていて …やっぱりルールが決まっているということかな? 例えば、5分で一人ずつ考えましょうというところから初めて、全員で10分間で意見を出し合いましょうとかやって、どんどん意見を入れていって、最後にまとめるとか、そういう時間とやることのルールが始めにしっかり決まっていないと、一人ずつの意見ってなかなかでてこない。やはり声の大きい人が勝ってしまう、ということになりがちなので。
始めは1人ずつ考えさせて、ちょっとずつ輪を大きくしていくというのが、今までやった中ではけっこううまくいくな、と思います」
◆質疑応答 2.
参加者.
「始めに全員でアイデア出しをやる時間はどのくらい?」
閑歳
「はじめのアイデアを出す時間は短いほうがいいんじゃないか?と思っていて。
あまり長くするより、どんどん3分とか5分で …学生時代にすごいやらされたんですけど、三分って言われて「矢印を使って新しい表現をしろ」みたいなことを1日何回もさせられたりして、
短い期間である程度プレッシャーがある中でやったほうが、ある程度以上は長くとっても一緒だと思うんですよね。
発想してアウトプットを出さなければいけない、というところを最初に鍛えたほうがいいのでは?と思う。自分はそれがあって助かった部分がけっこうあったので。短い時間でどんどん回すやり方を鍛えた方がいいかなと思います」
増井
「僕はあまりみんなで考えることがそんなになくて。ただ、いきなり3分ていわれて考えるのも難しい気がするので、そこは少しずつ時間をせばめていくとか。あとは、急に思いつくというよりは、自分は浅く長く考えるのが多いんですよ。自分で何度も何度も読み返して膨らませるというやり方をするので。ある程度長くとって、その間だらーっと考えているっていう方をとりますね」
閑歳
「あとは、自分では使ったことがないんですけど、アイデア用のトランプみたいなやつとか。アイデアのわけ方とか、同じものを分類するとか、無意識にやっていることが書いてあるような気がするので、そういうツールを使うのも手かなと思います」
◆質疑応答 3.
参加者
「アイデアって出そうとしても出なくって、逆にとりあえずいろいろ作ってみてユーザからだめだしを食らっていく中で、じゃあこここう変えようかな?というひらめきって多いと思います。
なんでこういうことを言うかというと、自分自身がいろんなスタートアップのイベントに出て、アイデアを出そう出そうとして出すのは難しいと。逆に、とりあえず作って小さく回してみて、そこで改良のアイデアが出てくるというのがあって …アイデアを出した後に検証とか改良とか、そういうポイントについていつも心がけていることは?」
増井
「とりあえずリリースして細かくまわしているプロジェクトがあるのですが、私たちが思っていたこととユーザの行動がかなり違っていて、ある食べ物の写真のシェアリングのアプリケーションでは、レストランとか外食の写真がすごく多いのではないかと思っていたのですが、実際には家で作ったものの写真が多くて。それは予想外だったので、それにともなって戦略とか、アプリケーションの次のバージョンを練り直したり、といったケースがありました。
特に、多くの人に使ってもらいたい場合は、どういったユーザ層に使ってもらうかで、入ってくるフィードバックとか行動が違うのですが、そういったことはリリースしてみないと分からないので、そういった意味では細かくぐるぐる回すのはひとつの手法。逆に、自分が使いたくて作っているものは、僕が作りたいっていうアイデアがあって、それを使ってくれるユーザを探すという感じなので、前者とは検証の方法も違ってくるんじゃないかなと思います」
閑歳
「Zaimは最初、もっとソーシャルっぽいにした方がいいかな?とかいろいろ悩んだのですが …蓋をあけてみたらみんな全然『ソーシャルとか興味ないっす』みたいな感じの人が本当に多くて。実際に集まってきたユーザのやりたいことと、始めはちょっとずれているんだな、ということを思ったりしました。
最初はtwitterとかfacebookへの投稿ボタンをけっこう大きくしていたんですけど、『外してくれ』といわれたりとか、本当に普通の人が使っているので『共有することが怖い』という感じだったので、今は右上に追いやってしまっていて。逆にカテゴリとか日付を変更するとか、というところを大きく出したりしています。
一方で、細かいバージョンアップと、大掛かりに中身を直すメジャーバージョンアップは、それぞれ別に走らせています。けっこう改良したりすると、ユーザがダイレクトに変わるというか、数字や声が変わるので、ちょっと出してみてからまた改良しようと思っています」
増井雄一郎様、閑歳孝子様、渋谷Lab様、Lightningspot様、ありがとうございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿