2012年6月9日土曜日

『【shibuya meets tech 5】ディレクターとデベロッパーの“こそあど”』ノート


2012/06/08に開催された『【shibuya meets tech 5】ディレクターとデベロッパーの“こそあど”』のノートです。ノートというかほぼ全部メモした感じですが …やはり生の会話には言葉の機微みたいものがあって、それが非常に面白いし、そういうものこそ残しておきたいと思うので、可能な限りノートに取ってしまうという …削った方がよいかな?と思う箇所は削りました。





20120608 shibuya meets tech vol. 5



講演者
株式会社ミクシィ 鈴木理恵子氏
株式会社バスキュール号 西村真里子氏

司会者
渋谷lab 鈴木氏

主催
渋谷lab

会場
Lightningspot




◆渋谷labって?

pasona techがスマホ開発とweb制作を行うための拠点
デベロッパやクリエータとコミュニケーションの機会を設けたい
技術セミナーをどんどんやっていきたい



◆自己紹介

◇鈴木理恵子氏

・背景
音楽の専門学校の出身
木工(ギターの製作)をしていたが、女性にはそちら関係の就職先が無く…
同じものづくりということで、ITならいろいろ実現できるのでは?と考えた


・mixiへの経緯
受託→SaaSと会社を移っていくなかで、(自分の関わるサービスを)もっと広く多くの人に使ってもらいたい、楽しんでいただく提案をしていきたい、という思うようになり、mixiに転職した。


・やっていること
mixi Platfromを提供し、mixiに関するアプリを作ってもらうという仕事をしている。

※mixi Platformとは?
mixi上のたくさんの情報(つぶやき・日記)を、開発会社に提供するためのAPI。



◇西村真里子氏

・背景

  • エンジニア5年。マーケティング2年。
  • ちょうど90年代後半に学生をやっていて、や舞台照明をやっていた。
  • 留学中に日本の友達と話すときにe-Mailを使っていた
  • 大きなステージで照明を作る仕事をしていたが、Flashならもう少し身近に自分の作りたい大きなステージが作れることを知った。
  • ITって何かすごいと思った。


・バスキュール号への経緯

いろいろ学ばさせてくれそうな会社ということで、最初にIBMに入った。
次に自分のクリエイティブを活かせるところに行きたいと思い、Flashを作っているMacromedia(現adobe)に転職。
それからグルーポンを経てバスキュールへ。

・こんな会社

  • 12年選手の会社
  • Flashメインで、インタラクティブ / マルチユーザ向けのコンテンツを作っている
  • mixiさんと、いかにユーザが楽しくなるかというサービスを作っている



◇バスキュール号がリリースしたサービス / アプリ

・Fantastic Answer
  • 友達とラジオを聴いて楽しむというコンテンツ。
  • 大喜利みたいな感じでユーザがネタを投稿すると、ラジオで拾ってもらえる。
  • ソーシャル・メディア・ラジオ・友達がmixiのプラットフォーム上で繋がる


・cotto
  • mixiの友達とも楽しめるandroid用アプリ。
  • デコアプリはいろいろあるが、これは複雑なコミュニケーション無しで使える。


・pelo
  • チェックインツール。
  • mixiにコネクトできる。
  • 位置情報をベースに友達と繋がることができる。
  • 海外のものは複雑だったり、mixiとコネクトできるものがなかったりした。


・Social Studium System


・mixi Xmas



◆topic / 現状・仕事の環境・組織体がどういう風になっているのか


鈴木
  • 開発は小さな単位に細かく分割し、 それを速いスピードでいる
  • チームは専門(機能や技術、サービスなど)毎に細かく分かれている

西村
  • iPhone・androidのアプリや受託など、様々なものをやっている
  • 何個も帽子をかぶっているような感じ
  • 「いろいろな人と仕事ができるので、コミュニケーションとしては風通しがよいかな」
  • 手が足りないときはいろんなリソースを使っている


◆topic / 現場の実態ってどうなのよ?

西村
「ディレクションとエンジニアのうまい連携を模索中という質問を頂いています」

鈴木
「永遠の課題ですね」

西村
「あとは、『自分に合ったスキルを身につけるべく現場の内情を知りたい』ということで …ディレクションとエンジニアの連携、うまくいってますか?」

鈴木
「弊社はわりとうまくいっていると思います」

西村
「私はディレクションとしてお金を儲けなければいけないので、クライアントの意見を『やりますね!』とか言って。それを社内に持っていくと(エンジニアから)『ふざけんなよ』ということがたまにあったり。『かっこいいことやろうよ!』といっても…」

鈴木
「『ちょっと待ってよ』とか」

西村
「そうそう。私とか気合とかノリで行こうとするんだけど、それがすごい嫌われるんですよね」

鈴木
「開発者からすると『ちょっと考えさせてよ』とか?」

西村

「そういうときはどうしたらいいんですかね?

『yes』って言って抱え込んじゃうと、体力勝負で潰れちゃったりとか …仕事が嫌になってしまう人もいると思うから、『ちょっと待ってよ』とか言ってくれた方がいいと思うんですけど。
mixiさんの方は、企画の方とエンジニアの方で『ちょっとそれ無理だよ』ときちんと言えるようになっているかとか、その辺はどうですか?」

鈴木
「弊社では、プロジェクトをどう廻していくかはチーム(チームリーダやマネージャ)毎で取り組み方が違うんですけど …大きく見ると、コミュニケーションを蜜にとろうとはみんな言ってますね。開発・企画の方を混ぜてミーティングを毎日やって、『今日何をするか』『もうやったもの』『まだやってないもの』を付箋でホワイトボードに張って。みんなの進捗が分かるようにしながら喋っていたり。で、けっこう大丈夫。それで解消されていることが多いですね」

西村
「企画の人も含めてそういう話をするんですか?」

鈴木
「そういうチームが多いですね」

西村
「毎朝とか?」

鈴木
「朝やっているところも、(一日の)締めでやっているところもあります」

西村
「ちょっと参考にしようと思います。というのは、企画の方で『いっちゃおうよ!』っていうごり押しとかしちゃったりとかして …(それよりは)なるべく、みんなが協調してできるといいなっていう。本当に模索中ですね」



◆topic / ディレクターと開発者の関係

西村
「今の会社に入って一年くらいなのですが、『おっ』と思うようなことがあって …企画を客先に持っていく前に、ブレインストーミング等で皆で考えて、『皆の提案を持っていくよ』という風にするようにしていて。そうするとうまく進められるのかな?というのを学びつつあります。

そうやると時間がかかるんですけど、ものづくりの人は自分の意見を反映したいというところがすごい深いと思うので …私みたいな(ディレクションの)人間はなるべくそういうことをやらないといけないのかな、と。

(参加者に向かって)
どうですか? 私みたいな『やろうぜ!』というような人が来ると、いっしょに考えてくれたりとかしますか?」

参加者
「個人的には全然ありかな、と思っています」

西村
「どんな感じで進めているんですか?」

参加者
「いまはウェブではなくて、業務系のシステムを作っているんですけど、マネージャとプロジェクトリーダーがいる状態で、後は数人のチームで一丸となってやっている感じで。他部署との連携も多いので、話を聞くだけではなくて、きちんとコミュニケーションをとらないといけないと思っています」

西村
「ディレクター側と開発者側で悩んでいるというか『どうしてもうまくいかないんだよな?』『どうしたらいい?』といった悩みを抱えている人はいますか?」

鈴木
「別にディレクション職の方を悪く言うわけでないんですけど、開発の仲間がランチとかでぽろっと言うのは …ウェブの画面があって、『ここをちょっと変えてよ』というのがあると思うんですけど、ディレクターの方からしたら『見た目がちょっと変わるだけだから、大したことないんでしょう?』という感じだと思うんですけど、稀に裏の仕組みをいろいろと変えないとできないこともあって。『簡単に言うなよ』みたいな愚痴があったりしますね」

西村
「それがすごい怖いなと思うのは、本当にテキストを変えればいい場合と、後ろでバックエンドを呼んでいる場合とを把握しないで言ってしまうことがあって …テキストを変えるだけなら(開発側は)『オッケー』って感じなんですけど、バックエンドのところに繋がっていて『ふざけんなよ』って顔をされたときには、『しまったー』って思うんですよね。

…どのパターンか分からないっていう時はどう言えばいいんですかね?『変えておいて』じゃない方が?」

鈴木
「『どのくらいかかりますか?』と聞いてくれれば、何日くらいかは言えるので …そこでディレクションして優先順位を付けてくれたりするとうれしいなーって思います」

西村
「『変えてっ!』じゃなくて、ってことですよね …自分が本当、ひどい人のような気がしてきた」



◆topic / 組織の規模とコミュニケーション

鈴木
「mixiに入るまでは100人以下の会社にいたので、1つのプロジェクトを動かすにもだいたい4~5人、それにお客様くらいで済んでいたので、あまりコミュニケーションを蜜にとろうという意識はなかったんですけど …mixiは500人くらいいて、何か1つ変えるにしてもいろんな部署に伺いを立てないと後で大変なことになるので、その辺は気をつけるようになりました」

西村
「私は逆に、何万人規模から何千人 …いまは40人規模の会社に行って。いろいろと面白くて、いろいろ全部自分で見れるって言ったら変なんですけど、私はステップに沿った承認というのが合っていないタイプで。『時代がもう突っ走ってるんだから行こうぜ!』というタイプの、そういうことをやりたい人間なので、今の40人がすごい風通しがいいというか。

でも今は大きい会社だから守られていたというのもひしひしと感じていて。エンジニアとの会話でもそうかもしれないし、社内の会話でも、『いかに今まで守られていたところで仕事をしていて見ていなかったのだろうか?』とか『あー見えてなかったなー』とか …どんどん学んでいる感じがしますね」

司会
「会社規模って影響するところが大きいですよね」

西村
「大きい会社だから大きいことができるっていうのもありますよね」


(中略)


鈴木
「1000人 …もっと大きい規模の会社の人はいますか?」


(数人が挙手)


鈴木
「むしろ伺いたいくらいですね」

西村
「そういう大きなところでどうコミュニケーションをとれば …エンジニアとディレクターとか、もしくはエンジニア同士で、どういう形のコミュニケーションで問題解決をしているかというのを」

参加者
「どういう形で …私は開発でも研究側の方にいて、実際に事業をしている部門とはテレビ会議などを行なっています」

西村
「どちらかというと研究所の方が強い? …って、変な言い方ですけど」

参加者
「弱いです。お金を稼いでいるのは事業をやっている方なので」

西村
「でも、コアはそこにあるじゃないですか」

参加者
「そうですが、お金を稼いでいる方が強いんです。そこからお金をもらって研究しているので …とにかく弱い立場で仕事をしています」

西村
「どうやって『なにくそ!』という感じにしていますか?」

参加者
「いや …メンタル的にきてしまうような人が出るような職場なので」

西村
「…私もちょうど前職でIBMにいたんですけど。そのときも大きな組織だからもどかしくてとか、意見が何重のレイヤで伝わらなかったりとか。メンタルとか壊す方もいて、せっかくスキルがある人達なのにどうしたらいいんだろう?とか …もともとの同僚がそうなっているのを見ると、どうしたら自分のやりたいことを企業の中でやっていけるのかな?という …難しい(問題)ですよね? …そういうときは『飲みに行こう』って言えばいいのかな?」



◆topic / コミュニケーションで心がけることは?

鈴木
「『ディレクターとデベロッパーの立場でコミュニケーションについて普段心がけていることを聞きたいです。気をつけていることをお聞きしたいと思います』。ありますか?」

西村
「我々としては、いいものをつくってお客様に喜んでもらいたいというところがあるので、少なくとも、社内でどんな戦いがあっても、『いいものを作りたい』というビジョンは守っていきたいというのがあります。

それから、『みんなで作っているんだよ』と感じるにはみんなで会話する必要があると思うし、聞かないとみんなが喜んでくれるアイデアはできないと思うので、開発チームでなくとも参加できるように、ブレインストーミングとかで意見を聞くようにしています。

また、やはりビジュアルがあると具体的に話を進めていけるので、(ブレストに)参加するときには、できれば絵を持ってきてもらうようにしています。それを『いま解決しなければいけないのはこういうことですよね?』という点の参考にして話をするようにしています。

そういうのを頻繁にやっています」

鈴木
「私もディレクターに話すときはなるべく絵に落とすように心がけています。

私の周りのディレクターはオープンな人が多いのですが、デベロッパーには『今は触れてくれるな』という雰囲気を出している人がいて。私は喋るタイプですけど、そうでない人もいるので、(そういう人には)システムを使ってお願いや相談をしたり …人によって(コミュニケーションの手段を)使い分けたりしています」

西村
「それはわたしも気をつけています」



 topic  / 盛り上がることの大事さ

西村
「(顧客への提案について。『こうした方がよくない?』というのが盛り上がって) …なんかみんな調子にのってやって。2週間以上これで盛り上がって、しばらく開発の時間が遅くなったりして。その提案は通らなかったんだけど、みんなで頭の中でシミュレーションしてキャンペーンやろうっていうのがあると、それは他のときにも使えたりするし …1回とか2回失敗しても、みんなで同じことを考えてみるのはいいことかな、と思います」

鈴木
「普段の業務とは離れるんですけど、社内のイベントで『WC2.5』というのがあるんですね。年に四回、月末の最後の2.5日を使って何かを作ろうという社内ハッカソンをやっているんです。それはエンジニアだけではなくて、企画の人とかデザイナーとか誰でも参加可能で、チームの募って合宿とかやっているんですね。最初は開発の人だけだったんですけど、徐々に企画の人とかも参加するようになって。

徹夜も覚悟でみんなで意見を出し合って。コンテストなので順位がつくんですけど …商品が出るのでみんなテンションがあがるんですね。かなり根をつめてコミュニケーションしてものをつくります。業務とは全く違うものなのですが、なかなかよい経験だな、と」

西村
「(その中から)サービスになったものもあるんですか?」

鈴木
「あります」

西村
「そういうのっていいですよね。やる気がでますよね」

鈴木
「コミュニケーションっていう意味でも、本音をぶつけあって。時間がないから遠慮しないんですよね …遠慮しないで言い合うっていうのがなかなかいい体験になっているな、というのがあります」



◆topic / コラボレーション

鈴木
「『異なる職種で見ているものを共有する工夫は?』ということなのですが」

西村
「モックアップとか、実際のシナリオを仮定してみるとか。元々Flashに強い会社なので、AndroidのアプリだとFlashからAIRで書き出して実機で動かしてみるというのはよくやってまして …これだと職種を超えてクライアントやメディアにも伝わりやすいので、非常に便利だと思っています。コラボレーションやりたいという人達には、『こういう感じになるから、一緒にやってみよう』という感じで使えます」

鈴木
「私はAPIを作る仕事なので、あまり画面というのがないんです。こういうAPIを作りましたというのを企画の人と共有しようにも、文字が出るだけなので全然共有できず、困ったことがあったんです。そういうときは、時間かかるけど『このAPIを使えばこんなアプリができます』という紙芝居みたいなものを自分で作って、意見をもらうように気をつけています」

西村
「絵とかモックとか言ったんですけど、いかに使っている人のリテラシーに合わせるかというところで、その立場の人が普段使っているものに当てはめるのはすごい大切。インサイトをどう使うのかというところはあるし大変だけど、それが見つかるといいなというのがありますよね」

鈴木
「相手の立場になって伝えようとしないとなかなか …というのはありますよね」



◆topic / ユーザビリティとデータとエンドユーザの関係

鈴木
「これは個人的に聞きたいことなんですけど …ユーザビリティテストはどうやっていますか?」

西村
「本当に常にやっているというか …企画段階でもそれが楽しいかどうかはまず社内でやるし、
クライアントにも何回もこういう形ですよね?というのを見せたり、ターゲットに近い人に実際に使ってもらったりとかしています。情報を集めて何回も絵にしたり、モックを作ったりしています。

いまやっているサービスでも、不都合があったところなど結果の分析をしていて …どういう機能だったらみんなが使ってくれているかというのを見たりしていて、使ってもらえる機能はどんどん良く、使われていない機能は削除してパフォーマンスを上げたり。

1回で終わりじゃなくて、何回もテストして良くしていく、という形でやっています」

鈴木
「そのテスト結果は開発の方などにも共有されているんですか?」

西村
「みんなで共有ですね。逆に調査部隊がいるわけではないので …エンジニアも『どういうデータが取れるか?』ということを考えながら開発するし、こっちも『どういうレポートがあればいいのか?』というのを考えながら作っていくというのをやっていて。結果を数値で見れるようにしています」

鈴木
「弊社でも全員に公開されているものがあって、それを見て声を上げる開発者もいます。みんなでやることで一体感がでるというところはあると思います」

西村
「データって大切ですよね。結果をちゃんと分析しないといけないというのは最近本当に思っていて …『作っちゃえばいいじゃん』ではなくて、結果を見てみんなで『どこを変えていこうか?』というのは必要だと思いますね」

鈴木
「私たちの仕事は一般の方がエンドユーザなので結果が見えやすいのですが、業務システムはユーザビリティの量り方が違うかもしれないですね」

西村
「確かに…

(参加者に対して)
業務系でユーザビリティというものはどういう風に扱われるのでしょうか?」

参加者
「正直に言うと、しっかりとは取れていないですね。大まかにやるくらいで …あとは人的にセミナー的なものを開催してお客様を集めてやる以外にの方法がなくて。サーバ自体をお客様のところにいれてしまうのでデータを取れないと。なので、提出して頂く何かしらの仕組みをとらないといけないのかな?と考えています」

西村
「それよりは、機能とかどれだけ正確に測れるかというのが重要視されるというのもありますよね」



◆topic /  コラボレーションでやってはいけないことって?

鈴木
「『やり方や手法、やってはいけないことを教えていただければ幸いです』 …これは難しい」

西村
「やってはいけないこと …でも、失敗しなければ何も(はじまらないというか) …ねえ?」

鈴木
「コラボレーションでやってはいけないこと …なんでしょう?これ質問された方っていらっしゃいますか?」

参加者
「例えば考え方が違ったりいろいろあると思うのですが …何かやるにあたってタブー的な、開発者にこれ言ったらだめだよね?とかそういったことを聞ければ」

西村
「私も聞きたいです」

鈴木
「開発者の人って、割と非難されるのって苦手かな、と。

認めて欲しいというか、自分のやっていることに誇りを持っている方が多いので、どちらかと言うと『お世話になっています』『いつもすごいですよね』『信頼しています』『いつも期日どおりありがとうございます』とかそういうのがあると、すごく心の距離が縮まるというか …そういう一言で、『頼まれていたのはここまでだけど、先までやっちゃいました』とか、そういう方がいるような気がします。逆に、最初から『お前だめ』ってやると心を閉ざすのかな?と個人的には思います」

西村
「『お前だめだよ』って言う人がいるんですか?」

鈴木
「それは(ストレートには)言わないのですが …別に非難しようと思っているわけではないんだけど、個人攻撃のように感じられるような言い方というか …コミュニケーションってそういうことがよくあるじゃないですか?(特にエンジニアに対しては)そういうことは気をつけたほうがいいと思います」

西村
「例えばfacebookはある意味スタートアップ的なところから始まっているけど、エンジニアからああいう形にまで築いていたりとか …いまはエンジニアのほうがかっこいいと思いますよね」

鈴木
「エンジニアにもいろいろな人がいます …みんな得意不得意があると思います。

私は外に出てお話するのが得意なのでそういうスタンスでやっていますが、そうでない人もいるし、サービスによった開発をしたい人もいれば、言われたものや伝えられたものだけを確実に作るのが得意とか、いろんな人がいます。ただ、そういうものははっきりと分かれているように思いますね」

西村
「話をするのがすごく大切だと思っていて …エンジニアにもいろいろなタイプがいるというときに、

そのエンジニアは最終的にはディレクタになりたいと言っていて、『だったら一緒にやっていこうよ』という形でやっていき、それはうまくいきました、と。そういうパターンのエンジニアが多いのかな?と思っていたんですが、みんながそれを求めている訳ではなくて。

『俺はこれを完璧に仕上げたいだけだから。別に偉くなりたくない。ただこれは俺に任せてほしい』という人がいて。(最初はうまくいっていなかったのだけど)それを分かってからは、彼のスタンスとコミュニケーションできるようになった …ということもあって。一瞬でもうまくいかないなー、と思ったら話してみることが大切なんだと思いました。

一緒に仕事をしているのに改めて聞くのも照れくさいんですけどね。ただ、『この人はここを追及したいんだから、こちらの勘違いで変なプレッシャーをかけたらいけないなー』とか、そう思います」

参加者
「逆に開発に言われたくないことは?」

西村
「もう言われ慣れてしまったんですけど、もともとはIBMでエンジニアもやっていて、プロジェクトの中も知っているということで『こいつ現場知らないな』とは言われたくないけど、よく言われますね。
『お前は現場知らないんだから黙ってろ』みたいな。言われたくはないけど、今は実際にそうだし …過去のプライドはどうでもよくて、今のポジションだけ考えようというのがあります」

鈴木
「開発者がそう言うことはよくあるけど …よくないことだと思います」

西村
「そこで喧嘩してもどうしようもないし …『私はこのポジションだから』って切り替えて、『そうだよねゴメン』ってやろうかなとは思いますよね。

…ミーティングルームとかでも喧嘩になると、周りがとても寒いですよね。たまにありません?真剣に喧嘩になったりとか」

鈴木
「あります」

西村
「自分もたまにやってしまうことはあるけど …後から反省するし、そういうミーティングに行ったときって切ない気持ちになるので、思うことは合っても引こうかな、と」



◆topic /  質疑応答

参加者
「日ごろ、チームでデザイナやテクニカルの方と仕事をしているのですが、チームの中にテクニカルディレクターやアートディレクターという方がいます。そういう人がデザイナやテクニカルを管理しているという中で、下手したらディレクターっていらないんじゃね?と思うことがあります。

テクニカルだけで作っているアプリもたくさんありますし、そういう中でディレクターにしかできないことについて考え方を教えて頂きたいです」

西村
「一番強いのはアートディレクターやテクニカルディレクターです。私は会社に勤めている人間なので、いかに良いサービスをお金にできるか?とか、受託の仕事であれば、次に生かしていけるか?とか …ちょっとでもお金の換算というか、アートディレクターやテクニカルディレクターが引いた視点を持てればパーフェクトだと思います。でも、アートディレクターやテクニカルディレクターは現場でのアートやテクニカルなことに集中したい(と考えていると思う)し、そうしてほしいし、というところで …どちらかというと自分はプロデューサとして全体を見ることが多いのですが、クライアントとの関係とか、重要なパイプラインを作ることを自分の価値にしようとしています」

参加者
「それぞれの専門分野に集中してもらえればという…」

西村
「そうですね」

鈴木
「私もそういう目でディレクターさんを見ています。

お金の部分とか、本当に分析や効果測定しやすいデータというのはどういうものなのだろう?ということを考えたりとか、定期的に分析し続けたりとか、(そういうものは)開発者からはなかなか出てこないなと思っていて、そういうところをディレクターにお願いして調整してもらったり、他の人に考えてもらったりして …開発は開発に専念したほうがいいのかなと思います」





鈴木理恵子様、西村真里子様、渋谷Lab様、Lightningspot様、ありがとうございました。

2012年5月29日火曜日

『スタートアップのTOPが本音で語る、サービス・チームの作り方、稼ぎ方』ノート

2012/05/22に開催された『スタートアップのTOPが本音で語る、サービス・チームの作り方、稼ぎ方』のノートです。NG箇所は省きました。あと、個人的に公開しない方がいいと思った話も省きました。

なお、パネルディスカッションは会話のようになっていますが、これはあくまでノートです。テープ起こしなどではないので、そこはご了承ください。



◆パネル参加者


株式会社クラウドワークス 代表取締役 吉田 浩一郎 氏
『crowdworks』


株式会社JX通信社 代表取締役 米重 克洋 氏
『vingow』 


株式会社trippiece 代表取締役 石田 言行 氏
『trippiece』


株式会社Labit 代表取締役 鶴田 浩之 氏
『すごい時間割』



◆パネル参加者紹介


◇吉田氏

・自己紹介
  • この中の四人では格段に最年長
  • 学生時代に劇団を主宰していたが、契約のサインミスで多額の借金を負った
  • 契約の世界を知る為に社会に出た
  • 成りたい姿は鈴木俊夫。クリエーターに対するプロデューサー


・クラウドワークスとは
  • クラウドソーシングのためのサイト
  • 不特定多数の人々を募って発注をするサービス
  • 週三十時間以上(フルタイム)の仕事が60%以上ある
  • 全国のエンジニア・デザイナーに一時間単位で受発注
  • 非対面の案件に特化
  • 時給制
  • 発注者は無料!



◇米重氏

・自己紹介・チーム紹介

  • vingow開発チームの平均年齢は22歳
  • 一番下は20歳
  • 社長は23歳


・vingowのコンセプト
  • 新聞が創刊されてから500年。時代に合った新しい形。500年目のイノベーション
  • 自動的にテレビや新聞のようにスイッチを開く、紙を開くだけ
  • 検索クエリや質問といった時代は終わりにしよう
  • 集めた情報を、何か新しい知識として蓄積して有効活用できる
  • 電車でクリップして、家に帰ってから見ることができる。情報収集の新しい形
  • 我々はブレインメディアと読んでいる


・vingowの機能
  • 自分の欲しい情報を欲しいものは大きく、そうでないのものは小さく表示
  • 新しい情報は上から表示される
  • キーボードがいらない
  • 全ての記事を全文解析してタグ付けする


今は8000人くらいが使っている。



◇石田氏

・trippieceについて

旅に行ってみたい。
ただ、けっこう遠かったりするし、一人でいくのは寂しい。物足りない。不安がつきまとう。
自分で企画するのも面倒。
ツアーは、けっこうみっちりしていて高い。

行きたい旅に行く仲間を作って、それを実現するサービス。
それがtrippiece。
旅を共有して、出会った仲間と旅に行く。
帰ってきてから、写真や思い出を共有できる。


・ポイント
  • 誰かと行った方が心に残る。
  • 1人じゃなかなかできないものをやる(スカイダイビングとか)
  • ちょっとテーマ性のある旅が人気


・実績
  • 35万円(相場は50万円)の企画に一日で15人が集まり、最終的に40人が参加した



◇鶴田氏

・すごい時間割について
  • 何がすごいのか? → 時間割を簡単に管理できる
  • それぞれのコマに講義データを登録できる
  • 各コマには出席など、講義にはテストの日程などを登録できる
  • どんな人がその講義を受講しているかの一覧が出てくる。そういう興味を満たすことができる
  • 友達が同じ時間に何の講義をとっているのかを確認できる


・名前の由来
  • エンジニアがつけていたフォルダ名をそのまま使った


・テーマ
  • 一人でも便利に使える
  • みんなで使うと楽しい


時間割の共有のためのアプリだったが、暇な時間の共有ができる。
作ってみてそういうことが分かった。



◆パネルディスカッション

◇サービスを立ち上げるきっかけ


吉田「技術系の何の体験をしても向いてないことが分かったから。これが一番大きな原体験。漫画は無理。劇団・カメラ・映画とか …アングラなものもやったが、ピンとこなかった。

ただクリエーターはめちゃくちゃ好き。だから、宮崎駿に対する、鈴木俊夫。そして、インターネットとともに生まれたクリエータがエンジニア。コレに対するプロデューサーになる」


司会「どうやって踏み出せばいいのでしょうか?」


吉田「20歳で会社をやって潰した、福崎さんという人がいる。彼はとりあえずやってみた。

…まずやる、出してみる、間違ってみることが重要。(私は)それで向いていないものが分かった。

ふと思ったことを無責任に。若いうちは後で取り返しがつく」


米重「元々は航空会社がやりたかった。中学に入ってから航空業界に興味を持った。

日本の航空業界は運賃がとても高い。海外ならもっと安い。なんで日本はそれだけ高いかといえば、それは規制と寡占市場や無駄な空港をつくるための費用。それを解決したい。

で、その為に国会議員・官僚になるより、航空会社をつくったほうが早いのではないか? と考え、そういう道に行きたいと思った。

今は航空会社ではないが、同じような問題意識を持てる業界としてメディアを選んでいる。今の会社は仮想通信社という指向。通信社事業をイノベーティブにやりたい」


石田「三つポイントがある。

まず、父と祖父を超えたかった。

次に、小さいころから事業に興味があった。価値を提供してお金をもらうのが好きだった。

3つ目。バングラデシュで原体験をツイートしたら、その場でツアーを作ることになった。日本に帰ってきてから学生に聞いたら、非常にニーズがあることがわかった。

そのときのアイデアで企業してみようと思った」


鶴田「13歳のときにネットにはまっていた時期があった。ある日突然、毎日いっていたサイトが閉鎖され、行き場を失った。で、自分で場所を作ったら皆が移住してきてくれて、最終的には15万人くらいになった。人を集めるのが自分にあっているのかな、と思った。

自分が作ったところに来てくれるのがすごくやりがいがある。

そして自分の興味が広がっていった。インターネットという数十万人の人にサービスできるという可能性を肌で感じていた。そういう原体験があった。まだまだ途中」


吉田「石田さんにきいてみたいのだが、旅行の手配から設立までには距離があるような… それが会社設立につながるきっかけは?」


石田「もともとはNPO法人をやっていた。そういうなかで、自分にしっくりくるものをやりたいと思っている中でたまたま出会った」


吉田「石田さんの世代では起業はかっこいいことなのか?」


石田「かっこいいというか、やりたいこと」


吉田「皆、起業したほうがいいと思う。俺の時代、起業は非常に縁遠いものだった。今は皆やっている。もっともっとやったほうがいいと思う。鶴田さんは最初から企業というかんじだったの?」


鶴田「ものを作るのが好きで …それが企業になると2004年くらいに気付いた。今も根っこはクリエーターだと思っている」


司会「企業するためには実際にサービスを作らないといけないが、自分でものを作れるのは… 鶴田さんだけですよね? 自分でできる場合とできない場合で苦労が違うと思うのですが」


鶴田「今まで30くらい作ってきたが、苦労は …今までだと、着想から作るまでが短く、必要なスキルを一晩で覚えて作ったり、短期集中でやってきたが、すごい時間割りでは一行もコードを書いていない。

自分で作れる経験があると舵取りもぜんぜん違うという実感がある」


石田「ウェブで完結しないサービスだから僕の存在意義がある、そういうモデルをたまたま作れてよかった。そうでなかったら僕の存在意義はなかった。

CTOには毎日怒られたが、彼の力は大きかった。非エンジニアCEOの全員にあるかはわからないが、僕には超えなければいけない壁があった。

これでいいじゃん!と作って、そこにユーザがなかった。エンジニアリングはそうではなくて、何がユーザのニーズとして正解か、という思考がある。(昔は)それがなかった。サービス提供者としては失格だった」



◇どういうビジネスモデルを考えていたか

司会「どんなビジネスモデルを、どのように立案しましたか?」


吉田「まあ、わりとシンプルで。(サラリーマン時代は)営業をしていて、エンジニアの作ったものを売り込むのは割と楽しかった。その中で、沢山のエンジニアと仕事をした。

そして、沢山のエンジニアの売り込みをしたいというのをテーマとしてもっていた。5年くらいそのテーマで考えていた。で、海外でクラウドソーシングのアイデアをみてこれだと思った。

作ってみて意外だったんだけど …海外のクラウドソーシングはエンジニアを機械として使うという発想があるらしく、クラウドという言葉がエンジニアに評判が悪かった。

だが、逆にチャンスだと思った。海外ではサプライサイドに偏っているが、こちらはエンジニアに喜んでもらえるようにすればよいのではないか?と思った」


司会「先ほどの話では受注側に課金するという話でしたが、最初から狙っていたのですか?」


吉田「いろいろサービスをやってきたが …2者からお金を取るサービスはうまくいかないという原則がある。

(クラウドワークスは)エンジニアに貢献しようと思っているのだから、(クラウドワークスが)貢献しているエンジニアからもらうのが当然だと思った。エンジニアに利便性を提供するのだから、企業は無料である。

この人に価値を与えるのだからこの人からお金をもらう、という原則は崩したくない」


鶴田「大学生とつながりたい企業は沢山ある。そこに価値を提供できるのではないか?というのがある。ただ、具体的なビジネスモデルはない。

時間割りだから毎日使うだろうというのがあるし、ターゲッティングがすごいので、特定の大学とか履修傾向とかでいろいろ配信することができるのではないか?と思っている」


司会「儲けを出していくのは?」


鶴田「これから。いろいろ水平展開できるのではと思っている」


~中略~


吉田「今はお金は余っていて、どちらかというと人に主軸が移ってきている」


司会「これは質問の中にあったんですが、儲かっていますか? という話。企業してうまくいったら、めちゃくちゃ金持ちになるんじゃないか? とか、(既に)なりかけているとか …あると思うんですが」


鶴田「今は売り上げは0ですけど、9月までには黒字転換する予定。何らかの形でこの夏に収益を出そうと思っている。

今は学生に強みがあるけど、たまたまそうなっているだけ。いろいろなサービスを生み出していきたいと思っている。何か安定事業を作ってから新規事業を次々と立ち上げたい」


石田「うまくいっているの意味はよくわからないですけど …死んでないからうまくいっているのではないでしょうか? 成功が何かもよくわからないし …旅をして喜んでくれるユーザさんがいるので、うまくいっているのではないかと。喜んでくれるユーザがいるので、僕はうまく言っていると信じたい」


司会「今後収益を増やすとしたら …旅を増やすとか単価を増やすとか?」


石田「そこはいろいろ考えている」


米重「vingowというサービスは1円も収益を生み出していない。今後の半年もそんな感じ。広告・課金・APIといったビジネスモデルを考えている。vingowはすごくデータが取れる。有償のAPIでいけるのではないか?といったことや、vingow自体にもっと便利な機能を載せてプレミアムモデルというのも考えている。収益については …儲かっているわけではないけど、潰れそうなわけではない」



◇チームや採用について。どういう風に向かい入れていたか?

吉田「twitterやwishScope経由で」


米重「弊社はエンジニア4名。デザイナー2名。友人のつながりで。けっこう近い人間関係の中で広がった。twitterやwishScopeのようなつながりではない。ソーシャルメディアはちょっと怖いというのがある」


石田「最初の最初は1人。こういうのをやりたいんだというのをつぶやいたり、知り合いを口説いたり、いきなり上京してきたりとか、よくわからない」


司会「twitterはフォロワではなくて、リツイートとか」


石田「それは覚えてないなー」


司会「バンドをやろうと思ってつぶやいたことがあるが、ふざけた人しか集まらなくて …何かあるのでしょうか?」


石田「いろいろつぶやいていた。熱があった、これはやりたいというのはとにかく譲らなかった」


鶴田「web幼なじみが、だいたい同じようなキャリアなので誘った。バンド時代に同じメンバーだった人がSIerをやっていたので引っこ抜いた。最初はシェアオフィスだったので、同じ部屋にいた別会社の人を、(その人の)退社を機に誘ったりした。僕にはエンジニアの知り合いが多い。相手にあわせてタイミングを見て誘った」


司会「シェアオフィスは横のつながりは増えますか?」


鶴田「情報交換はすごいする。あの会社が資金調達するらしいとか …僕の会社は向いていないと思ってでた。みんな若いので音楽をガンガンかけたりしている」


吉田「うちはインキュベーションオフィスなので、あまり音は出せない。あと …(そういう環境から、いわゆる)会社の中に入るエンジニアも何人か知っている」


司会「少人数なので毎日顔を合わせると思います。モチベーション管理などは?」


米重「デザインはできるが、コードはかけない。私はエンジニアではない。彼らの心理はよくわからない。わかろうとして勉強したこともあったが、なかなか難しい。

彼らの話をひたすらきいて、置物になってやるような感じになっている。とにかく彼らのペースに合わせている。

こういうビジネスモデルに向けて、こういう将来像に向けてやるんだという話はとにかくしているが、それ以外のことについては …自立した人が集まってくれたおかげ」


石田「旅に行ってくれっていってます。疲れたら旅に行ってくれといっている。エンジニアはなかなか行きたがらないのだが …あと合宿を2ヶ月に一度くらいやっている。合宿はモチベーションがあがりすぎて次の日がつらいというのがあるが、モチベーションをあげるにはよい。仕事をしてご飯を食べながらとか。場所が違うというのはそれだけ刺激になる」


吉田「一番いいモチベーションはでかい夢を共有していることだと思う。2年くらい前だが、社員に謀反を起こされた。自分の強みが生かせる先に人を引っ張っていくのじゃないと、こういうことになるのだなと …会議は3回くらいしかしていない。Redmineで情報共有はしているが、会議はほとんどしていない。夢を見せ、それを共有している。夢はわかりやすいものにしている」


鶴田「うちの開発体制はアジャイル・スクラム・リーンでやっている。3ヶ月で体制ができ、一週間でリリースできるようになった。

で、自分は会社に泊まりこんでいたのだが、毎日5, 6人で寝泊りしているとプライベートな話とかしなくなる。みんな常にいるので個人と個人で話す場がなくなる …なので、メンバーをシャッフルしてランチとか合宿とかをしている。

また、開発が大変な時期、目の前のタスクに追われているときは、実際のユーザとの対話の機会を増やす、というのをやっている。人に使ってもらっているというのを知ってもらうきっかけにしている。

自分はともかく、社員はなかなか外にいけないので、会社にゲストを呼んでいる。

あと、みんなプライドがあるので、取り組みがなかなか進んでいないときに抱え込んでしまうことがある。それは個人ではなくチームの問題とするようにしている、それを朝会で出してもらっている。

半年くらいは試行錯誤した。1人で作るのと5人で作るのでは全く違う。5人ひとつの頭脳を持つというのを考えている」


吉田「うちはすごい課題になっていて …すべて全員が認識している感じ?」


鶴田「全員。うちはスクラムでやっているので。人数が増えたときにどうなるかというのは、これから」


吉田「例えばUXだと、全員が同じ時間触らないと共有できなかったりするが?」


鶴田「少人数のチームだと全員で意思決定することがあるけど、それだとすごい遅くて …三人くらい選んで別室で話をしてもらうと15分くらいで決まる」



◇作るにあたっての技術、広げるためのプロモーション

司会「最初はどのくらい投資して、どのようにスケールさせたか?プロモーションの方針や『これが効いたぞ!』というのを教えてください」

吉田「初期投資の基本は持ち出し。生活に余裕がある限りはお金を受け取らないという。メンバー全員にどれくらい余裕があるか聞いた。

今の時代は個人が強い。なるべくイベントとかに顔を出して、そういう人たちに共感してもらう。リスティングにお金を突っ込むより、個人につぶやいてもらうほうが効果が高い。うちはリスティングよりは実際のイベント、インフルエンサーと話すというのをやっている」


米重「プロモーションは …いまはオープンベータでやっていて、景品代くらい。TechCrunchに書いてもらい、そこから興味を持ってもらってというのがあって …出向いて書いてもらうというのはあるが、それ以上はやっていない」


石田「僕らはまだアルファ版をうたっている。知らない人と旅にいくというサービスが世の中になくて、まだ調べている段階。初期投資はまだ続いている段階。プロモーションは特にやっていることはない。僕自身がイベントに出たり、メディアの人と親しくなって書いてもらったりしている」


鶴田「学生向けのアプリというのがあるが …プロモーションは口コミが多い。口コミのためにメディアをうまくつかっているというのはあるが、大学生はメディアを見ていないというのがある。外的なプロモーションよりは、(アプリの)中にバイラルする仕組みとか。1人使ったら1人以上使う仕組みにすれば5000人くらいから勝手に広まるのではないかというのがある。あと、学生サービスなので、学園祭とかとバーターでやっている。他の大学に宣伝する代わりに広告を出してもらったりとか。サービスにあわせた工夫をする必要があると思う」



◆質疑応答

・鶴田氏がコードを書かないのは、敢えてそうしているのか?

鶴田「単に自分より優秀なエンジニアがいるのがひとつ。全体を見る必要があるかな? というのもある。それに、全体を見ていてほしいとエンジニアからも言われる。そういう役割が必要」


・たくさんの機能を開発できない中で、何を基準に機能や仕様を絞り込んだのか?

吉田「うちはシンプルなので …個人以外はかなりそぎ落とした。ただ、将来的にはグループでも仕事を進められるようにしようとはしている」

米重「『一言でいうと新しい新聞です』と言えるような機能は作った。で、画像は後回しにした。コンセプトから逆に、まず作る機能などを決めた」

石田「ユーザやペルソナが欲しがっているもの。とりあえずこれがあれば実現できると言われたような気がしたもの。それが分からない場合は、仮説をたててその真髄を取り出し、それを機能化した」






Web CAT Studioの皆様、吉田様、米重様、石田様、鶴田様、ありがとうございました。

2012年5月20日日曜日

Fearless Journeyかんたんガイド

Fearless Journeyのルールや準備・進め方をまとめた資料を作りました。



2012/05/21追記


1. ちょっとだけ改訂しました。


2, 私が作ったpngファイルは印刷するには解像度が低すぎました…
印刷したい方は次のリンク先にあるpdfをご利用ください。
https://docs.google.com/open?id=0Byh-cIUeiW9wRV9IVmVCZ3o2Zjg


Fearless Journeyかんたんガイド


◇Fearless Journeyって何?


ゲームです。

目的の妨げとなっている障害を、いかにチームで克服するのかを学ぶためのものです。

障害を取り除くための戦略をFearless Changeという本の48のパターンから持ってきているのが特徴です。


詳しくは以下のリンクをどうぞ。

公式サイト
http://fearlessjourney.info/


@kdmsnr様のスライド
http://www.slideshare.net/kdmsnr/fearless-journey



◇カードの準備

カードには、印刷すれば済むものと自分で内容を考えるものがあります。


・印刷すれば済むもの

パスカードと戦略カードの2つです。

1. http://fearlessjourney.info/からファイルを入手します。

2. 上記サイトの『FREE Download』から『FearlessJourney Game / English』『FearlessJourney Game / Japanese』をダウンロードしてください。

3, パスカードはEnglishのzip、日本語の戦略カードはJapaneseのzipに入っています。


・内容を自分で考えるもの

開始カード・成功カード・障害物カードは内容を自分で考える必要があります。

1. 何かの紙を切り出してカード状にします。

2. 自分のチームの現状や目的を書いたものを、開始カード・成功カードの上に置きます。

3. 目的達成を妨げる障害物を20個書きます。

4. 余ったカードは白紙カードになります。




◇最後に

先日のスクラムプロダクトオーナー勉強会で、Fearless Journeyを実際にやりました。

楽しかったです。皆さんも是非。




あと、気付いた点などあればご指摘くだされば幸いです。

2012年5月6日日曜日

『第9回情報デザインフォーラム - 情報デザインのワークショップ』ノート


2012/05/04に開催された第9回情報デザインフォーラムのノートです。素晴らしい講演がたくさんあった。だからその講演内容を的確にまとめてみよう…! と考えていたのですが、見返すとノートの半分は私の感想でした。

なお、当フォーラムのテーマは『情報デザインのワークショップ』であり、8人の講演者による発表と学生によるパネルディスカッションがありました。パネルディスカッションはただただ見いってしまったので、ノートはありません。



◆オープニング

情報デザインのワークショップという本を作るために資料を持ち寄って集まったら、その資料の内容がよくて、だったら発表しようじゃないか …という流れで今日があります。という話でした。ハイスキルな人同士が集まっているからこそ成り立つ、この頂上決戦的な流れは好きです。


◆第一部 大学でのワークショップ

◇山崎和彦氏 - 『情報デザインのワークショップ・プロジェクトと体験ワークショップ事例』

体験という言葉とワークショップとの関係性についての話がメインでした。たしかに、参加者が体験をとおして『学び』を得るという、ワークショップが持っている特性を語るのであれば、『体験』が持つ意味や価値について論じるのは重要なことだと思いました。特に印象に残ったのは「ワークショップを誰とするか?」という話です。割とあっさりと触れただけだったのですが、このくだりを聞いて、私が持っているワークショップという概念についての認識は飛躍的に広がりました。 …というよりは、自分の体験によって植えつけられたワークショップという概念についての認識が矯正されたというか。人と人のコミュニケーションを通して作り上げていくものがワークショップである、というあたりまえの点について自分の中で勝手に枷を作っていたのだな、と反省することしきりでした。

以下、メモ。

・ワークショップは知識を得る場所ではなく、作り上げて本当の学びの楽しさに目覚めるためのもの。

・ワークショップでは『体験』することが重要。つまり、ワークショップ自体のデザインが重要になる。

・ワークショップにおける体験の分類
  1. 自分が体験
  2. チームと一緒に体験
  3. ユーザの体験をする … デザインのワークショップでは重要

・ワークショップを誰とするか
  1. デザイナ同士
  2. デザイナ・ユーザ間

・体験とワークショップの関係
  1. 体験を観察するワークショップ … 相手を理解する
  2. 体験から発想するワークショップ … アイデアを広げる
  3. 体験を視覚化するワークショップ … 個人的な作業を共有・評価し広げる
  4. 体験とビジネスを考えるワークショップ 
  5. 体験と社会環境を考えるワークショップ

・ワークショップの目的
  1. 学ぶ楽しさ・自主的な学び
  2. 発想の拡大・視点の広さ
  3. 共有・合意形成
  4. 相手の理解促進



◇原田 泰氏 - 『インフォグラフィックスを通して学ぶコンテンツ・デザイン』

図や絵は言葉と同じであるという価値観を持っているということをおっしゃており、実際にスライドの中で使われているインフォグラフィックスを見ると、ポテンシャルが高い表現技法なんだな、と興味を惹かれました。

  • インフォグラフィックスの制作工程

  • 1-1. 現実
    1-2. 解体
    1-3. 再構成
    1-4. 表現
    1-5. 魅せる/反応

    (フィードバック)

    2-1. 現実
    2-2. 解体
    この説明の際に使用している図が印象的でした。現実をパズルのピースのように解体しそれを再構成している図なのですが、メッセージがとても明確に伝わってきて、それが非常に印象に残りました。後で参考にしようと急いで描き写したのですが、私の描いた絵はまるで小学生の落書きみたいな感じになっていて、当初の意図とは異なる”味”のようなものを醸し出していました。スライドの写真を撮っておけばよかったとつくづく思います。

  • コンテンツ・デザインはメッセージを自分の言葉で表現し人に伝えるものである。
  • インフォグラフィックスの利点は『人に伝えることができる』『次の工程で再利用できる』ということ。
  • このような教育を行なう意図
  • ・ラピッドプロトタイピングをする体質を作りたい
    ・自らフレームワークを作り、使いこなせるようになって欲しい

インフォグラフィックスの視覚言語としての表現力と可能性を目の当たりして、モホリ・ナギのフォトモンタージュ作品やその造形理論をおさらいし直したいなー、とか思いました。



◇上平崇仁氏 - 『デザインワークショップの故きを温ねて新しきを知る試み』→『昔の事例を再解釈して新しいデザインワークショップをやってみた

過去の人達が作ったり実践したデザイン性の高い作品・授業・ワークショップを元にして、ワークショップを作成しているという話をしていました。そして、ワークショップを作り実践する中で浮き上がってくるものを指して「過去の事例から変わらない大事さが見える」ということを言っていました。時代を越えて普遍な大事なものがあるよね? ということです。また、過去のワークショップに学ぶことについて「そうしないと先人の実践が埋もれたままになってしまう」といった趣旨の話をしていたことも印象的でした。

そのほかにも、ワークショップやその周辺の概念についての見解を述べていたのですが、この点についても関心することしきりでした。一方的に教えるというやり方のデメリットの話から、これを裏返す形でワークショップを選択することの理由を導き出したりしており、私は見事に説得されました。


以下、メモ。

  • 何故ワークショップか? 『人は言えば聞き、聞けば理解する』わけではないから。
  • 学びは、知識をためるものではなく、社会的に構成されるべきもの。
  • 教えることにはデメリットがある。教わる側に固定観念ができ、それによって思考停止してしまう。だから、教えるより自分で学ぶ(ワークショップの)方がよい。
  • ワークショップのツールに重要なこと。道具になっていて、参加者がお互い確認ができるというオープン性があること
  • ワークショップには限界がある。参加することでやった気になるが、自信には繋がらない。また、ワークショップ中毒者というものが存在しており、彼らは週末温泉に行くかのごとくワークショップを利用している。

・ワークショップの構成要素
  1. 身体
  2. 協働
  3. 創造
  4. 共有
  5. プロセス重視

・ワークショップのポイント
  1. 先生はいない
  2. 客ではいられない
  3. はじめから答えがあるわけでない
  4. 頭とからだが動く
  5. 交流と笑いがある

・ワークショップの切り口

明確に切り分けできないが、次の2つがある。
  1. ワークショップを通して何かをデザインする
  2. デザイン手法や考え方をワークショップで学ぶ

・まとめ
  1. デザインにおいてワークショップと実践は同等
  2. 過去の事例から変わらない大事さが見える



◇安藤昌也氏 - 『写真を使った価値マップによるサービスアイディア発想』

サービスデザインの領域がだんだんと拡大しているという話と、ワークショップに適用する概念として『AT-ONE』というものがあるという話をしていました。で、後者の『AT-ONE』についてUXをする人が陥りがちな点と、重視すべき概念について話をしており、なるほどなーと思いました。

以下、メモ。

・サービスデザイン領域の拡大
  1. 『ニーズの充足』自体を価値とし、それを提供
  2. 『欲求の実現』体験した人が感じることを価値とし、それを提供
  3. 『意識→参画→価値』価値ではなく機会を提供

・AT-ONE
  1. Actor 登場人物を広く
  2. TouchPoints どうつなぐか
  3. Offering 何を提供しているか
  4. Needs 本来満たすべきニーズは何か
  5. Experience

・AT-ONEのポイント
  1. Offeringが重要。
  2. Offeringを正しく導けば、正しいActorやTouchPointsを導くことができる。
  3. UXはNeeds, Experienceを考えがち。



◆第二部 社会人のためのワークショップ

◇木村博之氏 - 『インフォグラフィックスは自分で考え行動させるためのキッカケデザイン』

インフォグラフィックスやコミュニケーションの手段に留まらずプロダクトへ適用範囲を広げているという話が大きかったです。デザインが求められる領域がどんどん広がっているというか、デザインに対するリテラシが大きくなっているのだな、という話です。個人的には、デザインに予算を投下できないようなプロジェクトでも、それなりのデザインを持っていることは大前提になるのではないか? という気がしています。私はそちらの方がいいので、情報デザインやユーザエクスペリエンスという技術が、世界にあまねく浸透し広がってくれることを本当に期待しています。また、ワークショップに参加することについて述べた際に「自分で考え行動するためのきっかけでしかない」と言い切っていたのが非常によかったです。


以下、メモ。

・フレーミング・リフレーミングが重要

・インフォグラフィックスの作成手順

(だいたいこんな感じだったような…)
  1. 伝えたいことを決める
  2. データを集める
  3. 伝えたいことを再考する
  4. 表現を考える
  5. 情報を絞り込む
  6. レイアウトを考える



◇小路晃嗣氏 - 『組織におけるワークショップの目的とその運営のためのポイント』

組織とワークショップという、私にとってピンポイントかつ即効性があるという非常に気になる講演でした。内容も期待を上回る素晴らしい内容だったのですが、全体としてメモがぜんぜん追いついていかなったという… 非常に残念です。「もっと大事な情報がたくさんあったような気がするのだけど…」と、ノートを見返す度に思います。スライドが公開されることを祈るばかりです。また、『ワークショップ開催のポイント』の箇所のスライドで、皆がカメラを取り出して撮影しまくっていたのは非常に印象的でした。私も確固たる決意を持って撮影に望めばよかったと思います。

・ワークショップの開催は継続して行なうことが大事、というのが結論。

・ワークショップには縦割りの組織の中で機会がないような人々が会う、というメリットがある。

・会社では費用対効果が求められる

・ワークショップ開催のポイント
  1. 儲けること前面に
  2. 責任と範囲を明確に
  3. 継続できるように
  4. 収支バランスを図る
  5. 税で社会に貢献する

・ワークショップ開催の合理的な側面
  1. マニュアル化して誰でもわかる(開催できる)ように
  2. レビューと改善を行なう

・ワークショップ開催の俗人的な側面
  1. メソッドやガイダンスとして余白に表現する
  2. 人間力によるOJTを行なう



◇脇阪善則氏 - 『UX TOKYOとワークショップ - サード・プレイスとしての機能と役割』

『ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング』の翻訳者です。非常にためになる本で、たびたびお世話になっております。今回は『UX TOKYO』を基点として、ワークショップの機能と役割について述べていました。特に印象に残ったのは、ワークショップを開催・洗練させていく中から非常に具体的な成果物を作り出す、という展望に関する話です。私にも計画的にものを見る視野が欲しいと思いました。

以下、メモ。

・ワークショップとは
  1. 本の学びを実践する場
  2. 実践の場
  3. インプットした知見を消化してアウトプットする場
  4. 新しいことに挑戦する場

・ワークショップを通して経験の蓄積ができる
  1. 実施
  2. デザイン発想
  3. フレームワーク化
  4. 技術仕様化



◇浅野 智氏 - 『企業にHCDを根付かせるワークショップとその開発』

『何かを教える』ということと『教えるということについて責任を持つ』という点について、非常に印象を受けました。私の持っている価値観に「『何をすればいいか?』よりも『何故そうしようと考えるのか?』という、その人の持っている行動原理や価値観に触れたり想像できることが非常に重要である」 …こんなものがあるのですが、この講演はこの点について強く働きかけるものでした(あくまで私の印象です)。また、講演内容には実用的な内容も多々含まれており、学びがたくさんありました。

なお、特に強く印象に残ったのは、HCDを教えるためには7回のワークショップが必要ということと、この点については絶対に譲れないというものでした。つまり、「3回でやってくれませんか?」というお誘いがあっても、HCDを教えるためには7回のワークショップが必要なため、断固として無理、という話です。『断る』『譲らない』という行動や価値観について、私にはここまでの力強さがありません。だから印象に残りました。

また、ワークショップの構成についての考え方も参考になりました。
  1. 概論について講義し、以降の学びのメンタルモデルを形成する(これは絶対必要)。
  2. 全体像がわかるワークショップを行なう。
  3. 以降は個別のテーマについてワークショップ。結果がでやすいものから行なう。

その他、メモしたポイント

  • ワークショップは楽しいことが大事。
  • ワークショップを作る時はただ思いついたものではなく、もっと長いスパンで教えているようなものを落とし込む。
  • ワークショップでの学びが根付くところとそうでないところがある。社内に強力な推進者がいるところなら根付くが、トップダウンでやっても定着しない。






後援者の皆様, パネルディスカッション発表者の皆様, 主催者の皆様, ありがとうございました。

『第9回情報デザインフォーラム - 情報デザインのワークショップ』感想

2012/05/04に開催された第9回情報デザインフォーラムの感想です。情報デザインのワークショップというテーマについて、8人の講演者による発表と学生によるパネルディスカッションがありました。以下はフォーラムに参加した感想です。

あと、『情報デザインの教室』は買っておこうと思いました。


◇情報デザイン及びUXの価値が高くなっている

山崎氏が体験とビジネスを結びつけることについて述べていらっしゃいました。木村氏はインフォグラフィックスがコミュニケーションの手段にとどまらず、プロダクトの領域に進出しているという話をなさっていました。浅野氏は「PCをすっとばしてスマホを手にするユーザが増えており、彼らは利用するコンテキストに合わないプロダクトをわざわざ使おうとしない」という話をなさっていました。

また、元IDEOのElle Lunaさんが来日した際におっしゃっていた話の中に「市場の評価におけるデザインの割合が大きくなっている」というのがありました。「そんなところにまでデザインの概念とその重要性が広まっているのか」という印象とともに深く印象に残ったのですが、前述したようにこのフォーラムの中でもデザインの価値が繰り返し取り上げられており、デザインという概念がビジネスのさまざまな領域に織り込まれ始めているのだということを改めて認識しました。



◇人間中心設計とワークショップは親和性が高い

ざっくりとした言い方になりますが、協働するという点において、これらは非常に似ていますよね? 互いの(前向きな)コミュニケーションをとおして成果物を制作するというプロセスは同じなわけです。それから、(けっこう大事なことなのですが)成果物を評価する基準も何か似ているような気がします。

私がメインとしている業務系のソフトウェア開発の場合、利用者とプロダクトの所有者と開発者の利害は著しく一致しないという問題があり、求められるコミュニケーションのベクトルがワークショップのそれとは違うのです。予算と納期と品質と機能があって、それぞれについて三者間での落としどころをひたすら探すというか …そういう観点から見ると、情報デザインとワークショップの親和性の高さは羨ましいです。


◇ワークショップの開催目的をはっきりとさせることが重要

ワークショップをとおして考え方を学ぶ、という話であればワークショップはそれ自体が目的となります。他方、ワークショップをとおして何か有意義な成果物が作りたい、という話であればワークショップはあくまで手段ということになります。前者であればワークショップの参加者に求められるのは参画する意識と必要最低限の予備知識ですが、後者であれば参画する意識よりはきちんとしたアウトプットを出せるだけのスキルが重要になるでしょう。ワークショップを開催するにあたって、これらの区別を行わないということはあまりないでしょうが、もししなければ散漫になってしまうのかな? と思いました。


◇主催者・参加者それぞれがワークショップについての学びを持ち帰ることが重要

ここでいう学びは『ワークショップについての学び』です。

ワークショップ自体はそこそこの歴史があるものであり、学びの手法として強く根付いているものだと思います。そういう意味では、ワークショップというものはなかなかに語りつくされており、それが何であるかという議論も一通り出尽くしているのかな、とも思います。

一方で、このフォーラムの講演でもワークショップにおける体験や経験が未分化のまま語られることがあったりして、まだまだ発展途上で未知の領域が沢山あり、だからこそワークショップについて学ぶことが重要なのかな、と思いました。

ワークショップに参加したけど「あまり発言できなかったし、得るものが余りなかったな~」という経験や、ワークショップを主催したけど「みんなピンと来ない顔をしていたし、ディスカッションも盛り上がってなかったな~」という経験など、こういったものをうまく整理してくれるような概念やプラクティスが揃ってきてくれるといいと思います。


◇ワークショップはあくまで学習の一手段であり、銀の弾丸ではない

ワークショップが何であるかという話や、ワークショップの持つ特性、ワークショップの持つポテンシャルなど、いろいろな観点からワークショップについて語られていました。そういったメリットについての話の総体として、ワークショップは座学を超える学習の手段なのだな、という感覚を抱きました。他方、ワークショップが持つ中毒性を温泉に例えて警告を発している方もいました。また、ワークショップを通して学んでも、それが定着しない組織がある、という発言もありました。で、良いところと悪いところをまとめると、ワークショップが有益であることは間違いないが、それは適切な使い方があってこそなのだと思いました(当たり前のことですよね)。

また、ワークショップは協働という形態を取るので学びを共有することは必須です。なので個々人が学びを深堀りする必要があるテーマの場合や、学びに個人差が生じやすいようなテーマの場合、ワークショップは逆に弱いのかな? とも思いました。








後援者の皆様, パネルディスカッション発表者の皆様, 主催者の皆様, ありがとうございました。

2012年5月2日水曜日

セーフウェア - 安全・安心なシステムとソフトウェアを目指して


この本はコンピュータ制御システム及び、コンピュータ制御システムに携わるエンジニアのための本です。

私が関わる業務領域の中には、安全性のためだけにここまで論理を組み上げて品質を作りこむ必要がある領域というのはありませんでした。

業務系のシステムでは(要件が人の生死に関わらないという範囲において)品質や安全性は、コストに対してトレードオフさせるのが一般的です。そして、大抵の業務系システムの要件は人の生死には関わりません。私が携わってきたシステムの中にもそのようなものはありませんでした。おそらく、今後もないでしょう …ですが、ここまで知っておいて損することはないとも思います。

分析や設計をする際、その思考プロセスの根底に安全性や信頼性が横たわっており、それを見通しながら作業を進めることができるのと、そうできないのとでは、成果物のできあがりに明らかな差がでるように思えてならないからです。私は設計に品質を織り込みたい性格なので、存在を知った瞬間にこの本を即買いしました。

いわゆるSIerが取り扱うシステム・業務領域というのは、この本で対象にしているものとは違います。ですが、安全設計に係る考え方を知っていることは全く損にならないし、ここで学んだことをシステム構築に応用できたなら、それは素晴らしいことです。


◇どういう本か

コンピュータ制御システムなどの中に入っているソフトウェアが対象となっています。その中でも、システムのエラーが人の生死に直接的に関わるようなシステムに特化した内容になっています。なので、エンタープライズ・ビジネス系のそれとはだいぶ毛色が違います。

例として、信号の制御システムを考えて見ます。

車の運転中に全ての信号がいきなり真っ暗になったら困りますよね? で、交差点とか横断歩道を越える際にはものすごい神経をすり減らしながら走り、精神ががっつり削られたくらいにやっと家にたどり着いて、調べたら「初歩的なエラーでソフトが落ちたらしいんですが、原因が分からないんですよね。あの後に再起動したら、なんかうまく動いているので、しばらくはこのまま監視しようと思います。トラブル発生時のログなんてとってないし、まあ、再現したらそのときに調べますよ」とかいう話だったとします。今まで事故を起こさずやってこれたことに感謝すると同時に、明日からの自動車の運転に深く絶望し、同時にこのシステムに携わる全ての人間をぶっとばしてやりたい、という感じになりますよね?

そういったクリティカルなシステムをつかさどるようなソフトウェアを安全に構築するための理論や方法論までを包括的に述べたのがこの本です。


◇内容

人の生死に関わるようなシステムの設計方法を述べるだけあって、コンピュータ制御システムの安全について詳細に論じられています。大体、次のような感じです。

  1. リスクの概念をコンピュータに結び付ける。
  2. これをコンピュータにまつわる誤った神話に関連付け、解きほぐす。
  3. 事故の原因におけるシステムとヒューマンエラーの関係から、人間の役割について論じる。
  4. 工学的観点からシステム安全について述べる。
  5. システムを安全に作成・運用するためのプロセスについて論じる。
  6. ハザードを分析し、要求分析フェーズで検討するための手法について述べる。
  7. 安全性のための設計やインタフェースの設計について論じる。


◇付録

システムハザードを伴う10の重大事故のレポートが巻末に付録として収録されています。チャレンジャー号・ボパール・チェルノブイリといった有名なものから、Therac-25・セベソといったものまで多岐にわたります。

中でも、Therac-25のレポートは衝撃的です。この治療機器には、特定の条件下で起きるソフトウェアのエラーにより、致死量の放射線を患者に浴びせてしまうというハザードがありました。ですが、Therac-25の発売直後には誰もそんなことは知りませんでした。だから、致死量の放射線を浴びせたとしても治療者は気づきません。そして、致死量の放射線を浴びてしまった患者は、患部に強い痛みを感じたまま家に帰り、数日後に原因不明のまま死んでしまうのです。そうやって何人かの死者を出した後、一連の死者はシステムハザードの犠牲者であり、犯人はTherac-25、原因はソフトウェアのバグ、いうことが明らかになります。

患者が体調不良や違和感を訴える一方で、治療医や製造業者はシステムが抱えている危険を認識していなかったりします。認識不足、ちょっとしたミス、簡単な見落としや思慮不足が重篤事故に繋がり、人の生き死にに直結するのです。そう考えると、非常に恐ろしい話です。


◇最後に

この本の対象に業務系システムが含まれていないということは書きました。それはこの本の論旨からも明らかです。しかし、これは、この本がシステムの用途と人の生死がリンクするようなシステムについてしか取り上げていないだけ、という話であるとも考えます。

業務系のシステムの中には、「これ本当に運用設計したの? あと、この挙動バグじゃない? 問題ないの? これ、詳細設計とか書くようなプロジェクトじゃなかったっけ? ところで、テストの資料は? え? もう残ってないの? じゃあ、これが要件を満たしていることは誰が担保してるの? えー? それは…」という、いろいろと酷いシステムがあって、運用チームが神経をすり減らしながらだましだまし動かしているようなものだってあるわけです。ある意味で、人が緩やかに死んでいくようなシステムです。

そういうシステムを見ると悲しい気分になります。たしかに、業務系のシステムは要件的に人の命には直結しないものばかりですが、システムのライフサイクルと携わる人達全てにまで視野を広げれば、(例えこの本が私のようなエンジニアを視野に含めていないとしても)この本が私には無関係である、とは言い切れないのです。

私は、デベロッパー・プロダクトのオーナー ・ それからユーザー ・ その他もろもろの関係者が心穏やかにすごせるようなシステムを作りたいし、そのためには設計に品質を織り込むというアプローチは非常に有効だと考えているし、そのときにこの本の知識があれば役に立つんだろうな、と思っているわけです。




各章を読んでノートしていきます。

2012年4月23日月曜日

Infotalk#41

2012/04/20に開催されたInfotalk#41のノートです。


講演の内容も面白かったですが、質疑応答の話が(自分にとって)リアルで興味深かったのでこちらのノートをまとめました。話題が多岐にわたっているのですが、それぞれに「なるほどー」と思うところがあってよいです。 …もっと話を聞きたかったし、懇親会には参加すべきだったと素直に思いました。



◆モデリング

◇ユーザにモデリングしてもらうことの目的

まず、モデリングの目的について考える。成果物が目的なら専門家がやればよい。参加している人達に全体像を理解してもらうことが目的なら極力彼らにやってもらうようにした方がよい。技術を身につけるためには、見るだけではなく五感を使うことが効果的である。


◇概念モデリングを実生活の中で身につけるためにオススメの方法

本を買ってやってみてもわからない。講習会に行くか、経験者と一緒にやってみる。

モデリングには適正があり、できる人とできない人がいる。センスがある人は1日2日でも割とできるようになる。(あくまで山勘だが)まともにモデルできる人は5%くらいしかいないのではないか。ただし、できない人にも分かる日が来る。


◇いままでモデルを知らなかった人がモデルをとらえられるようになる、という変化について

(モデルを)とらえるというよりは、(モデリングを)分かってしまうというのが適切だと思う。

例えば、PBLの成果発表の際に聴衆からアンケートを取ると「あんなのでわかるわけがない」という回答がよくあり、やったことがない人がそう思うのは当たり前だと思うが、やっている人はPBLのやり方で分かってしまう。論理的な話としては怪しいが、そういうものがある。


◇論理だけでは達成できない世界がある?

論理だけで達成できる世界とそれだけでは達成できない世界があるのではないか。非科学的な話になるが、潜在脳みたいなものがあり、そこで問題意識を持ってとらえていると、ある日突然それが顕在脳に移り、「あぁ、なんだ…」というものになったりするのではないか。


◇モデルができる人とできない人の違い

本人が分かると思うかどうか。やってみて「なんだこれは」「こんなのやっても仕方がないじゃないか」と思ってしまう人はやらない方がいい。モデリングはあくまで特性の1つであり、それが全てではない。全員ができる必要はない。モデルと違う頭を持っている人は、自分の得意なところを伸ばせばよい。モデルに拘る必要はない。



◆情報システム業界

◇収入・就労形態及び業界について

雑誌などにIT業界年収ランキングなど掲載されていることがあるが、あれはあくまで平均年収。稼いでいるのはフリーでやっている人やコンサルティングファームにいる人。情報システムのSEという範疇だと余り稼げない。

日本の情報システム産業は人貸し業になってしまっており、人月幾らで人を貸すという話しかやっていない。なので、例えば月200万の人間の年収は7~800万くらいだし、60万なら年収200万くらいにしかならない。そういう意味で人貸し業としてのITベンダーは終っている。


◇CIOについて

日本にはまともなCIOはいない。これが上がりのポスト、という人がいっぱいいる。偉くなった人が最後の数年を過ごすポジションである。つまり、可もなく不可もなく終るということしか考えていないような世界。

◇情報システムの成熟度について

1. CIOがいらない世界

一番最初の情報システムはサイロ型。それぞれのシステムが独立。システムは特定の機能だけを表現する為のもの。インタラクションは皆無。情シ部の部長や課長がいて、次に何を作ればいいかが分かっていればいい。


2. 情報システム部の部長上がりでCIOが勤まる世界

コンピュータのスペックが上がってくると、インフラを統合しようという話になり、方法論を標準化しようという世界になる。情報システムの長には、技術の観点からシステム間の横串をさす技術が求められる。


3. CIOにビジネスの観点が必要となる世界
CSMなど、ビジネスの中で横串を指すという話になっていく。そうすると技術だけでなくビジネスの観点が必須となり、ビジネス出の人がCIOになる。これがここしばらくのトレンド。


4. 最近~今後の世界

ビジネス出の人がCIOになるというトレンドがあったが最近では逆になっており、実装方法が求められるようになっている(例えばホストと、PCサーバを並べてスケールさせるのではコストが全く違う)。こういう世界でシステムを考える為にはハイブリッドなスキルが必要になる …でもそんな人はいないので、ビジネスと技術の両方ができるチームを作り、対応していくような世界になっていくのではないか?





南波 幸雄様、KOYAMA Hiroshi (pk0612)様、ありがとうございました。