2012年12月16日日曜日
『DevLOVE2012 - Social Change 〜ソフトウェア開発者が経営者になるまでと、これからの戦略〜』ノート
2012/12/15に開催された『Devlove2012 - Social Change 〜ソフトウェア開発者が経営者になるまでと、これからの戦略〜』のノートです。
◆はじめに
◇倉貫義人氏の自己紹介
・ソニックガーデンという会社を経営
・twitterとブログをやっている
→お客様、ユーザに見てもらえる
→自分達が何を考えているか、やっているかを書いている
→→ブログなら外の人にも社員にも読んでもらえる
・「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー
→日本では、営業出身の人やプログラマだったけどその心を忘れた人が経営者をやっている
→→そういう経営者ではなく、プログラマの気持ちがわかる経営者のままでいたいと思いながらやっている
・少ない人数でどれだけ大きいことが出来るか
→それがかっこいいと思っている会社
→たくさんの人数で大きいことをやるのは普通
→→普通なのはかっこよくない
→ITは少ない人数でも大きい仕事ができる業界
・Agile x Ruby x Cloudが技術的プレゼンス
→アジャイルでずっと繰り返して開発
→RoRでずっと保守性の高い状態を保つ
→クラウドでスモールスタート・スケールアウトしている
・やっていること
→自社のサービス
→納品のない受託開発
◇キーワード
・エンドユーザ「所有から利用へ」
・作り手「完成させることから持続させること」へ
→お客様は所有するわけではない
→→完成させても仕方が無い
→→利用してもらわないといけない
→→→利用してもらうためには持続しなければいけない
→完成しただけではお金は儲からない
→→月々使ってもらってお金になる
→「バグがありません」と言っても利用者がいなければお金にならない
・「ソフトウェアそのもの」ではなく「ソフトウェアが使えること」を売る
→今までは作ったものを売ったらお金をもらえるというビジネスモデル
→→これは八百屋と同じ
→→→一次産業
→ソニックガーデンは「使えること」を売る
→→タクシーや映画館を考える
→→「そのもの」ではなくて、移動する距離や映画を見ることを買う
→→→これは三次産業
・ソフトウェアはまだサービス産業になっていない
→サービス産業としてのITをやっているのがソニックガーデン
◆キャリアと自分が考えていることの話
◇学生時代
・プログラムをずっとやっていた
→ベンチャーで働いていた
→アルバイトとしてすごく給料がよかった
・研究室の仲間たちとフリーソフトを開発
→ウェブで公開
→みんなダウンロードしてくれる
→掲示板に書き込んでくれる
・プログラムを書くと反応がもらえる
→これは最高
→→「インターネットとプログラミングを一生やっていこう」
◇まず海岸沿いのSIerに
・入社年度に経営方針の転換が
→「技術大事だね」から「マネジメント大事だね」へ
・デスマーチプロジェクトに参加
→周りはプログラミングの経験がないが、自分はベンチャー出身
→→プログラミングができるということで悲惨な現場に
→→ガンダム世代なので「1年戦争だ!」
・でもプログラマには1億円 ~ 2億円のプロジェクトを立ち直らせることができない
→どれだけ画面を速く作ることができてもダメ
・あるとき平鍋さんに出会った
→XP本を紹介された
→→「俺の考えていることと同じだ!」
→→「XPやアジャイルを広めていけばプログラマとして出世していく道があるのでは?」
・社内勉強会をやってみた
→部内のメーリングリストに投げた
→→でも反応がない
→社外の勉強会やコミュニティに参加
→→社内にいると半径3メートルしか見えない
→→社外にいけばいろいろな人に会える
◇XPを読んで、そのとおりマネジメントを行った
・エンジニアをしていたが、徐々にマネージャの立場に
→マネジメント・お金の計算…
→→こういうのは苦手
・XPのとおりマネジメントをやった
→仲間が集まってきた
・新入社員から育てた
→やりたくない人がいるので、引き受けてしまう
→→真っ白なキャンバスにアジャイルを教えることができる
・あえて炎上プロジェクトに入るという育て方もある
→若いときだけ限定の手法
→こういう場所ではみんな困っている
→わらをもつかむ思いなのでやってくれる
→「朝5分でいいから立ってミーティングしてみましょう」
→アジャイルとか言わないでやるのがポイント
→→上手くいったら「アジャイル」という
→→上手くいかなかったら「それは無理でしょう …上手くいくわけないじゃないですか」で収める
◇アジャイルのチームを作って中間管理職になったが
・ある日、会社の都合でチームが解散
→履歴書を書いた
→→「これじゃ転職してもPMやらされるわ」
・「もう一回プログラマをやろう」
→でもjavaでは若い人に勝てない
・「エンタープライズでrubyをやろう」
→でも受託はやりたくない
→→「社内システムをやろう」
◇人月と完成責任のビジネスモデルは止めようと決めた
・そのために3つ捨てた
→java
→マネジメント
→SIerの受託開発
・あと社内での出世も捨てた
→「好きなことをやろう」
→社内システムを作る仕事についた
・内製でアジャイルをやってすごくうまくいった
→内製でアジャイルはすごく上手くいく
→最初は2人で始めた
→→それが全社展開するまでになった
→→→その社内SNSを使ってイベントを企画・開催する人まで現れた
◇サラリーマンとしての転機
・また部下を持ってかれた
→自分達でビジネスにすれば解散されないだろう
・社内SNSをオープンソースにしよう
→会社を辞めて現場に行ってもそこに戻れるだろう
◇自分戦略の振り返り
・オーナーシップを持つ
→会社を辞めるときまで自分は"会社の中にいる人間"だと思っていた
→→そうではなくて、個人と会社は対等
→→単に雇用契約をしているだけ
→→→どっちが上か下かとかない
→自分の人生は自分でオーナーシップを持たないといけない
→→オーナーシップは「自分が会社員である」とか、そういうことには全く関係ない
・変化は自分から起こす
→待ってから変化を起こすと大抵うまくいかない
→→自分から変化を起こすようにした
・自分のチームを作る
→2年目に辞めようと思って相談したとき言われた
→「まだ止めたほうがいい」
→→いま辞めても仕事はない
→→元の会社から仕事をもらう形になる
→→→ただ下請けになるだけ
→→→→これはつまらない
→「有名になれ」
→→「自分の名前で仕事ができるように」
→「仲間を作れ」
→→いまだと自分が病気になったら終わり
→→本当にやりたいことがあるなら一緒にやってくれる人が必要
→→→仲間・チームを作らないといけない
◆起業・ソニックガーデン・ビジョン
◇起業を決めたときに考えたこと
・リーンソフトウェアビジネス
→大きなことをするのに大きなお金を使うのがソフトウェア開発
→→でも、いまのソフトウェア開発にそんなにお金がいらない
→→→少人数でも開発できる
→→→データセンターもクラウドで代替できる
→→→→少人数でもそれなりのことがやれる
・ライフスタイルカンパニー
→一生プログラマとして働きたい人がいる
→→どうすれば(彼らが)それをずっとやっていけるかを考えている
→上場してバイアウトとか考えてない
◇ソニックガーデンの3つビジョン
・IT業界の産業革命
→お客様の真のパートナーになりたい
→「作って終わり」はパートナーじゃない
→→お客様がもうかったら自分も儲かるような、そういうやり方
・プログラマを一生の仕事にできるような業界にしたい
・いつでも夢にチャレンジできる社会に
◇世の中にはオーダーメードで作りたいというニーズがある
・受託はやるけど納品しない、派遣しない
→月額定額モデル
・金額を見積もりから分離する
→出来る範囲で頑張る
・顧問弁護士の働き方と同じ
→プログラマも月額定額で顧問になればいい
→→これは、お客様から見たら社員(内製部隊)に見える
→→個人的には内製が一番いいと思う
・でも内製は難しい
→実際にエンジニアを雇えるか?
→いいエンジニアが分かるか?
→→だからそこにエンジニアとして入る
→→→移動しないで月額定額でやる
◇月額定額の形態が向いているビジネス領域がある
・次のようなものが必要な領域
→スピード重視
→フィードバック
→スモールスタート
→スケールアップ
・社員向けのシステムではなく一般向けのシステム
→例えばEC。お客様の外に付加価値を提供するようなもの
・これからの時代はそういうビジネスばかりになる
◇完成指向から持続可能へ
・バグ0ではなく、出たときにすぐ直せるように
→バグがないのは当然だけど、長く使っているといつかは出る
→→そのときにどれだけ早く直せるかが大事
→ある一点ではなく、ずっと続けることが大事
・コードの共同所有
→綺麗なコードでないといけない
→→リファクタリング
→→コードレビュー
→→テストコード
→→→技術戦略に至っていく
→みんな好き勝手に言語などを選定すると共同所有できない
→プロジェクト毎に好きな技術を使うと技術が残らない
→→プラットフォームの統一が必要
→→→ここまでいくと経営戦略
・サーバ落ちてもいいけどすぐ復旧できるように
→「絶対に落ちない」ではなく
◇品質とは何か
・仕様どおりに作っても仕様が間違っていると…
→それはゴミ
→ビジネス的に正しいことをやらないと価値にはならない
→→ただただテストとか頑張っても仕方が無い
◇究極的にはプログラマが全部やるべき
・プログラマが要件定義から運用まで全部やる
→テストはマーケティングからビジネスまで
→運用はローコストキャリア
→→技術の統一
→→徹底的な自動化
→→→少ない人数でも回せるように
◇所有から利用という波は明らかにおきている
・完成から持続へ
→一次産業から三次産業へ
・まさしく産業革命
→こういう活動を起こしていくことが大事
◇ソニックガーデンでは新規事業をたくさんやっていこうとしている
・でもビジネスは難しい
→失敗したら死んでしまう
→成功しても死んでしまう
・起業リスクはリスクじゃない。マネジメントすることができる
→大きな山にいきなり登ったりはしない
→小さな山を何回か登ってから
→→起業リスクもそういう風にマネジメントできる
・ウェブ開発は基本的に人件費だけ
→でもみんなホールインワンを狙う
→でも脱サラして一念発起とか
→→これはナンセンスだと思う
・スタートアップはまだ産業ではない
→スタートアップを成功させるためには経験とか学びの時間が必要
→→でもサラリーマンにはその時間がない
→→→会社を飛び出さないといけない
→→→→これはすごくもったいない
・一発成功はない
→何回か失敗して、それから成功する
・学びの時間と一念発起のギャップをどうすればいいか
→年齢が少々高くても企業できる社会に
・ソニックガーデンでは、顧問もスタートアップも一緒にできる
→優秀な人は週の前半に仕事を終えてしまい、時間を作り出せる
→→その時間にチャレンジできる
◇プログラマを一生の仕事にできるように
・「高みを目指し続けたい」
→まずそう思ってもらいたい
→→でも1人では登れない
・プログラマ = ソフトウェアのエンジニアリング全てに責任を持つ人
→エンジニアリング = マーケティング・ビジネス・プロダクト以外の全て
→ソフトウェアの全てを見る覚悟が必要
◇ソフトウェアの価値
・完成した時点では0
→お金を払って作ってもらったなら、最初はむしろマイナス
→動かし続けて始めて価値がうまれる
・運用して使ってもらうところが本当に大切
→エンジニアには運用・保守 ~ 最後の死んでしまうところまで見る覚悟が必要
→でもそれができるプログラマってどれくらいいる?
→→多くない、でもできないわけではない
◇どうすればソフトウェアの全てを見ることができるか
・ずっとRubyとお客と話すことしかやっていないエンジニアがいる
→そうやって成長すると6年目にCTOになれる
→入社1年目から育てると全部のことができるようになる
・戦略とはどんなことに時間を費やすかということ
→自分の時間を上手く使えばみんなにもできる
◇ソフトウェアの産業革命
・最初の産業革命で、職人から工場の時代になった
→インターネットの登場
→→再び工場の時代から職人の時代に
・プログラマはマニュアル化のできないナレッジワーカー
→ノマドでタイムフリー
→プログラマの生産性が一番高いのはマネジメントされていない状態
→→自由にやらせるほど生産性が上がる
・ナレッジワーカーはマネジメントできない存在 = 大企業は不要
・会社としてどうやって自由にやらせる?
→大きな会社じゃ無理
→→小さな会社にするしかない
・人を信頼することが重要
→小さい会社なら、信頼することができる
→→個人の顔が見える範囲の会社で充分
→ソーシャルメディアによる信頼と共感の世界
→出来る量について嘘をつかない
◇ソニックガーデンの三つのチェンジ
・Embrace change
→変化を受け入れる
・Fearless change
→自分から変えていく
・Social change
→変われたならそれを回りに広める
◆途中で出てきた話
◇脳のブレーキを壊す
・この前の(何かの)世界大会で記録が2回3回と塗り替えられることがあった
→ここ10年破られていない記録だった
・誰かが1人破った
→他の人も「オレもいける」となった
・社内で半径3メートルだけ見ているとそうなる
→偉い人も社外の飲み会で見ると普通のおじさんだった
→→そういう人達がすごい仕事をしている
→→→「自分もできるのでは?」と思えた
◇外の活動と中の活動をする「ガラパゴスなキャリア戦略」
・大きな会社にいて外で講演・発表している人は珍しい
→重宝される
・大きな会社でアジャイルをやっている人は珍しい
→やはり重宝される
・エンジニアは自分の腕こそキャリアと考えがち
→でも実は自分がいる環境も含めてキャリア
・自分の周りの環境も自分の価値
→社内でやっていることを内緒にするのは勿体無い
→社外でやっていることを社内に還元しないのは勿体無い
◇会社で新しいことをするには?
・提案ではなく相談
→提案だと、上司は必ず反対する
→→威厳がなくなるから
→「○○をやりたいけどどうしたらいいか分からない」と聞く
→→Yes / Noではない聞き方をする
・肩書きはくだらないけど大切
→役職が低いと返事をくれない人がいる
→→大企業では大事
・トップかららの視点と言葉を身につける
→「社長もそういっているよね」ということで納得してもらえる
◇サラリーマンは意外とチャレンジできる
・経営者でチャレンジして失敗するとやばい
◆SIerとそのビジネスモデルについて
◇世の中は人月か成果物の完成責任かのどちらか
・macBookAir
→モノにお金を払う
→完成責任のビジネス
・弁護士
→「絶対に勝訴してください」ではない
→1時間辺り幾らのビジネス
・日本のSIerはねじれている
→人月ビジネスなのに完成責任がある
・生産性を上げるほど売り上げが下がる
→時間や人が必要な提案をする方が評価される
◇SIerでアジャイルをやろうとしてもあまりうまくいかない
・ビジネス的に完全に成功しない
→アジャイル関係のものには別に悪いことは書いてないのに…
・なぜなのか?
→そもそものSIerのビジネスモデルが悪い
→→SIerのゴール:ものを売ること
→→お客様のゴール:使ってお金をもらうこと
→どうしてもいさかいが起きる
・SIerのビジネスモデル = 決まった要件の中でどれだけ作るか
→このモデルが悪いのではないのか?
◇SIerを経営者の視点から見ると
・要するに保険屋
→ユーザは「システムが完成するという安心」を買う
→お金を出せば最後はなんとかしてくれる
・リスクを丸抱え出来る企業体力、これが優位性になる
→合併するのはそういうこと
・保険屋ならそれは正しいかもしれないが
→赤字プロジェクトに入ったエンジニアは悲惨
→→人生を消費してしまう
→→これはお金で解決できない
◇SIerとクラウドのビジネスモデルの違い
・SIerは作ってお金をもらって終わり
→品質管理が製造業の考え方
→→作りこんで、売る瞬間が最高品質
・SIerは製造業の考え方
→一発ゴールの世界
→こういう世界はウォーターフォールは理にかなっている
→→アジャイルとか言わなくて良い
・SIerのつもりでクラウドビジネスをやっても全然儲からなかった
→使っている瞬間を最高にしようと切り替えたら上手く回り始めた
◇今のシステム開発には問題がある
・派遣業界で人間のビジネス
→業界の中の人から見ても問題がある
・ちょっと画面を変えるだけで数万、数十万かかる
→業界の外の人から見るとこういう問題がある
・実際はそんなに費用も時間もかからない
→数字が膨れるのはバッファがあるから
・みんなが自分の分のバッファを積む
→期日を切ると、それは絶対に達成しないといけなくなる
→→絶対にやるためにはバッファは積まないといけない
・バッファを積むのは人間だから仕方が無い
→持たないというのは単なる精神論
→→でも積むとぼったくりになってしまう。
・バッファが積まれる理由
→「絶対にできる?」と言われると「5日」と返す
→「できなくてもいいけどどれだけかかる?」だと「3日」
→→バッファは"絶対"の約束から生まれる
→→完成と納品から納期が発生し、それには"責任"が生じる
→→→そしてバッファが積まれる
・納品しなければ上手くいくのでは?
→ソニックガーデンがやっていること
倉貫義人様、CyberAgent様、DevLOVE様、ありがとうございました。
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