2012年12月22日土曜日

『Running Lean -実践リーンスタートアップ 刊行記念 著者アッシュ・マウリャ氏 来日特別セミナー at Yahoo! JAPAN』ノート - ケーススタディ (2 / 4)


2012/12/17に開催された『Running Lean -実践リーンスタートアップ 刊行記念 著者アッシュ・マウリャ氏 来日特別セミナー at Yahoo! JAPAN』のノートのケーススタディの部分です。



◆ケーススタディ - アッシュ・マウリャ氏が本を書いたときの話

◇自分が本を書くにあたってどういうプロセスを辿ったか
・本を書きながらメソドロジの評価・テストをした
 →これについて細かく書いたのが『Running Lean』の第2章

◇この話は本を書くもっと前の段階から始まる
・そもそもはブログに書いていた
 →Running Leanの原則の部分についてはずっと書いていた
 →→ただし、原則について知っていたからではなく、自分も分からないから書いているという状態
・「ブログの内容を本にまとめるつもりはないのか」
 →そういった記事を幾つも書いていたら、このようなコメントがきた

◇本を書くような時間はなかった
・当時(今も)事業をやっている
 →正直に言うと興味はなかった
・作家 = 山小屋とか人里離れたところにこもって本を書く人
 →自分はそんな人間になりたくない

◇そうこうしているうちに、11 ~ 12人くらいからリクエストがきた
・この辺りから「これはどういうことができるか」というのを考えるようになった

◇自分に問いかけた質問
・「これは取り組むに値するものなのか?」
・「ソリューションを提供する価値があるだけの課題が存在するのか?」

◇何をしたか
・出版のリクエストした人に直接インタビュー
・ティーザー(触りとなる)ページを作った
 →プロダクトでいうデモのようなもの
・ブックカバーもないしタイトルも今とは違う
 →それは最適化の作業
 →→そういうものが必要になるのは最終的な段階
 →それらは「最初からしっかりしていなくてもいいだろう」という考え方
 →「タイトルやカバーにリスクはそんなにないだろう」

◇「一番リスクが高いところにフォーカスしよう」
・まずは目次を書き出した
 →本のリクエストをした人達と目次の案を共有した
 →→対話(Conversation)を行った
 →→→彼らからいろいろな意見をもらえた

◇「この目次のとおり、こんな形の内容で書いてくれるなら… お金を出して買ってもいい」
 →対象(リクエストをくれた10人くらい)全員が言ってくれた
 →→ある程度繰り返してここまでもっていけた

◇ここまでが定性的な確認作業(Validation)
・これができても証明できないことがある
 →「スケーラビリティがあるか?」
 →「本を書くだけの労力を使う価値があるのか?」

◇目次ができた段階でティーザーページに変更を加えた
・タイトルを変更
 →ヒアリングしたときにいろいろな人からフィードバックをもらえた
 →→もともとよりいい案がたくさん
 →→→そのうちの1つがタイトルに
・この夏(2009年の夏)に出すということを宣伝
 →この時点では後4~5ヶ月先
 →かなりアグレッシブなスケジュール
・メールアドレスを送ってもらうシステムを組み込んだ
 →送ってもらうことで、どれだけの人が関心を持っているかを図れる

◇実際には夏には出版されなかった
・「ブログにいろいろ書いてあるからできるだろう」と思っていた
 →見積もりが甘かった
 →→結局遅れてしまった

◇変更した後にやったこと
・ブログやtwitterに書いて告知
・Eric riesなどにもコメントをもらった

◇その後… 何もしなかった
・他の仕事をやっていて、この本からはいっさい離れた
・エビデンスは作っていた
 →「関心を持っている人の規模が充分にあるか?」
 →これが確認できるまでは動かなかった

◇夏には1000を超えるメールアドレスが送られてきた
・プロジェクトとして価値がある
 →これだけのメールがくるのは、実際に課題として認識されているから
 →プロジェクト化

◇まずはMVPに手をつけることに
・ブログで情報はかなり書いていた
 →でも本を書くにはもっと膨大な作業が必要だった
 →→とてもすぐ終わるものではない
・MVPの(1つ)の定義
 →「最終製品の一番小さなバージョンをカスタマーに示し、そこから学ぶこと」

◇MVP = ワークショップ
・ワークショップを開催することに
 →目次をベースにスライドを起こした
 →→テキストしかないようなもの
 →→→時間をかけずに作ることができる
・オースティンで無料のワークショップをやると告知
 →30人が関心を示した

◇無料で始めた目的は
・バリューを確かめるため
 →「無料にも関わらずバリューが無いなら、絶対お金を出してくれない」
・リスク緩和
・無料だから気に入らなかった人は「ワークショップは駄目だった」で終わり
 →お金を返せと言われることがない
・30人の申し込みはあったが、10人だけ
 →最初は10人だけが参加するという形で組んだ
 →→あとで違うバリエーションのワークショップをやるための余裕を持っておきたかった

◇最初の1回目からうまく評価された
・「これならお金を払ってもいい」
 →いくらくらいかを確認
・残りの二回はPaidなワークショップに
 →最初の1回以降は全て有料

◇有料のワークショップ開催は目的でもゴールでもない
・「コンテンツにバリューがあると感じてもらえるか」を確認するのが目的
 →無料だとバリューがあると感じてもらえているかを確認しにくい
・夏の間はずっとワークショップを開催
 →中身や流れをリファインしていった
・でも本やチャプターは全く書いてない
 →この段階ではまだスライドを作っているだけ

◇夏に出すと言ったのに、夏の間ずっとワークショップをやっていた
・いろいろな人から「まだでないのか」「どうなっているのか」というメールが届くように
 →対応しないといけない
・「もともと想定したより見込みが甘くて… 時間がかかってしまっている」
 →「これからきちんとプロジェクトに対応する」
 →「あと1つ、約束しましょう」

◇普通の本のそれではないやり方でローンチした
・「この本は、ソフトウェアのようにイテレーションをベースにして出します」
・「無料のチャプターを提供します」
・「プレビューも提供します」
 →プレオーダーしてもらえれば、2週間毎にチャプター2つを送ると約束
・これらを受けてランディングページを変更
 →プレオーダーのページを追加
 →"coming this summer" -> "comming soon"
 →→どれだけ時間がかかるか分からない

◇2週間毎にリリースするというやり方は、想定外なくらい上手くいった
・2週間の間にいろいろなフィードバックをもらえる
 →それを元に改善をかけていくことができた
・読者自身もアントレプレナー
 →構成の変更内容の提案
 →図を作って送ってくれることも
 →もちろんスペルミス・誤字脱字・文法の指摘も

◇全員がフィードバックをくれたわけではない
・注文してくれた人の半分くらい
 →彼らはアーリーアダプターだと思う
・アーリーアダプターなので出たらすぐに欲しい
 →出た後にきちんと改善・ヘルプすることをいとわない
 →→アーリーアダプターにはそういう人が多いと思う

◇だいたい本の3/4を書いた
・ここで想定外のことがおきた
 →大手出版社から連絡をもらった
・この本はリークしているようなもの
 →何度も出している
 →PDFかつDRMも入ってない
・何度も確認した
 →そのくらい驚いた

◇出版社の人が気にしていること
・この本がマーケットを作ることが出来たこと
 →魅力(Traction)があるということ
 →気になっているのはそれだけ
 →PDFやnoDRMのことは特に心配していない
・まさしく投資家の考え方と同じ
 →始まったばかりのプロジェクトに投資するというのはリスクが大きい
 →→彼らの方でかなりのリスク削減策をとらないといけない
 →本でも同じ考えが言えるということ

◇勢いもあってそのまま第一項を書き終えた
・この時点では複数の出版社と話を進めるようになっていた
 →最終的には2010/2に販売
・ランディングページ・ブックカバーをこの段階で綺麗に
 →この段階になって始めて綺麗にすることが重要になった
 →それまでは全く気にしていなかった

◇アーリーアダプターの人達がいて助かること
・「これには本当に価値がある」と思うときちんと評価のコメントを出してくれる
 →実際にコメントをもらい掲載した

◇この本は大規模なソフトウェアと全く同じ
・終わりはなくてリリースがあるだけ
 →第一版は対話(Conversation)の始まり
 →今でも改定を加えている
 →ブログ、ニュースレターでの活動も継続している

◇徐々にカスタマー層が広がっていった
・最初はアーリーアダプターだけだった
 →ウェブデザイナーやデベロッパー
 →今ではいろいろな人が読んでくれるように
・ワークショップは継続してやった
 →ワークショップはこの本のMVPになっているため
 →→内容を変えたり、客層を変えたり
 →→→そうやってきちんと学習しながら、第二版を作っていった

◇ワークショップで知ることができたこと
・本についての学び
・アントレプレナーが問題・課題がとして感じていること
 →これらの課題のために、この本以外にもプロダクトも作った
 →→オンラインで使うリーンキャンバスというツール
 →→他のプロダクト(metricsSystemなど)への派生も

◇最後に
・メタ原則の要素を感じ取ってもらえれば幸い
・ケーススタディはこれ以外にもいっぱいある
 →ハードウェア
 →ソフトウェア
 →政府
 →→実際にこのプロセスを使ってプロジェクトの成功率を上げている事例も
・もっとケーススタディを知りたい人は?
 →Lean Start Up Conferenceを検索してみるといいと思う
 →→政府系・教育系などいろいろな事例が見つかる






Ash Maurya様、O'Reilly Japan様、Yahoo! JAPAN様、ありがとうございました。

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